ボクシングWBA世界バンタム級2位井上尚弥(25=大橋)が怒りもパワーに変え、国内最速の3階級制覇と日本人初の英国人王者撃破に挑む。25日に東京・大田区総合体育館で挑戦する同級王者ジェイミー・マクドネル(32=英国)とともに24日、都内のホテルで前日計量に臨み、両者ともに一発パス。当初予定より1時間以上遅刻した王者陣営から謝罪の態度がなかったことに怒りを覚えた井上は、KO撃破を予告した。

 許すつもりはないのだろう。先にリミット53・5キロでパスした井上の眼光は鋭かった。減量遅れを理由に当初予定より1時間10分も遅刻して計量会場に姿をみせたマクドネルが53・3キロでパスすると、自然とにらみ合いになった。ニヤけ顔の王者に対し、刺すような視線で怒りを伝えた。

 「ふざけてますよね。謝る言葉が1つもなくて。昨日までは紳士的だと思っていたのに。王者陣営の態度にイラっとしました。明日の試合にぶつけます」

 急激に水分を抜く減量方法で、一気に細くやつれた肉体となったマクドネルに対し「顔が別人で、変わりようにビックリしました。40歳ぐらいにみえました」と辛辣(しんらつ)に分析。さらに「水抜きの体は12回戦うボクサー向きかどうか。ボディー(ブロー)が効くだろうし」と自信に満ちた笑みを浮かべた。

 マクドネルは10年間無敗で、4年間王座を守ってきたV5王者。しかも過去6度、日本人が英国人世界王者に挑みながらも全敗している、嫌なジンクスもある。「判定決着にするつもりはなくて。KO決着で締めくくりたいと思います」と井上。最高の幕切れで、国内最速16戦目での3階級制覇を成し遂げるつもりだ。【藤中栄二】