前日本バンタム級王者赤穂亮(32=横浜光)が、約1年ぶりの復帰戦を初回KOで飾った。

 1月のV2戦は減量中にダウンし、2度目の棄権で王座を陥落した。昨年8月の初防衛戦以来の試合で、ロベルト・ウドトハン(29=フィリピン)と対戦。1回はかわすつもりも、左ボディーで相手が下がった。2分すぎに右ボディーをみぞおちに2発ねじ込むと相手がうずくまった。10カウントで1回2分25秒KO勝ちとなった。

 赤穂はいつも以上に落ち着いた出だしだったが「デビュー戦みたいに緊張した」という。試合に関しては「1回は詰めすぎないで、足で外そうと思っていた。それなりの戦績の相手で、8回までやるつもりだった。左ボディーでうめいて、効いたのが分かった。ちょっと早すぎ。もう少しやりたかった」と話した。

 1月の防衛戦は15年以来2度目の棄権で、すぐに引退を決断した。そこへ兄貴と慕う元世界王者の下田氏から毎日叱咤(しった)激励された。ジムにも見知らぬファンから「引退するな」という電話が20件以上かかってきたと後輩に聞かされた。

 徐々に現役続行へと気持ちが変わり、4月後半に石井会長と3度目の食事の時に申し出た。石井会長も「17歳で上京してきた時から一緒にやってきた仲。本人の希望を受け入れた」という。

 赤穂は初心に帰って、この一戦に集中した。「この3カ月はできる限りのことはやった。10年後、20年後、この半年の人生経験は生きるはず。悔いの残らない人生にしたい」と話した。

 これまで2度世界挑戦も経験している。3度目の期待もあり、階級は「世界を目指すならスーパーバンタム級」とは言ったが「次を見ずに一戦一戦こなしていく」と、現役ボクサーの喜びをかみしめていた。