WBA世界ミドル級王者村田諒太(32=帝拳)が30日、都内で2度目の防衛戦を発表した。10月20日(日本時間21日)に米国ラスベガスで行う同級2位ロブ・ブラント(米国)との指名試合は、動画配信サービス「DAZN(ダ・ゾーン)」による日本人の世界戦初の生中継が決定。Jリーグと超大型契約を結んだ巨頭とのタッグ。今後、日本ボクシング界にも資金投下を呼び込むアピールの場として、ラスベガスでは日本人王者初のKO防衛を誓った。

村田らしい試合の意味づけだった。「DAZN」の文字が彩った壇上、「DAZNさんはJリーグも多大なる支援をされている」と話題を振った。そして描いた。「そういったお金の動きがボクシング界にも動くことがあれば、4、6回戦…、日本王者というレベルでもファイトマネーで生活が苦しい選手が多いので。そういったところも今後充実していくような1歩になればいい」。1つの防衛戦という枠を自ら取り払う視座。日頃から日本ボクシング界への恩返しを念頭に置く男らしい青写真だった。

16年、DAZNはJリーグと10年2100億円超の放送権契約を結んだ。テレビ中継主体からインターネット配信へと一気の方向転換は日本スポーツ界の1つの転機にもなった。現在、DAZNの国内主力競技は、プロ野球、バスケットボールのBリーグなどに広がる。村田とのコラボはその新機軸になる。

本人もそこに大きな可能性を見いだす。国内事情に目をやると、日本王者の主たる収入源はアルバイトというのが現実。「日本一になった時くらい、ある程度まとまったお金が入らないと夢がない」。サッカーとの競技人口の差も考慮するが、「こっちにも同じようにお金が生まれてくれれば」と期待する。そのために誓う。「良い形で勝ってボクシングは面白いなと思ってもらわないといけない」。

今回は明確にKO決着を狙うが、ハードルは低くはない。日本人のラスベガスでの世界戦は6回、防衛成功は西岡、亀田知の2人がいるがともに判定で、KO防衛はない。ただ、指名挑戦者の立場のブラントにも「しっかり前に出て、おもいきし殴ってやろうと思います」と倒す自信はある。

快勝すればDAZNへのアピールだけではなく、次々戦には公言する標的、同級2団体統一王者ゴロフキンも見えてくる。1つの防衛戦、それ以上の価値を持つ本場の一戦となる。【阿部健吾】