国際オリンピック委員会(IOC)が22日、スイスのローザンヌで理事会を開催した。20年東京オリンピック(五輪)の実施競技から除外も含めて検討してきたボクシングを存続させる方針を決めた。

   ◇   ◇   ◇

紆余(うよ)曲折と長い時間を要して、ようやくアマチュアボクシングの東京五輪での実施が決定した。

国際協会(AIBA)の会長の素性や、ガバナンス(統治能力)の欠如、リオデジャネイロ五輪での不正審判疑惑など、種々さまざまな問題がクリアになるかが焦点だったが、選手が犠牲になるような最悪の事態は回避された。

では、母国開催の五輪でメダルを狙える有力選手はいるのか。世界における日本の現在の戦力を考え、イチ押し選手を紹介する。

なお100年以上五輪で実施されてきた同競技でメダル獲得した日本人は5人。60年ローマ五輪フライ級銅メダルの田辺清、64年東京五輪のバンタム級金メダルの桜井孝雄、68年メキシコシティー大会同級銅メダルの森岡栄治、12年ロンドン五輪同級銅メダルの清水聡、同五輪ミドル級金メダルの村田諒太となる。

【男子】モンスターが認める逸材がいる。

堤駿斗(19=東洋大)。習志野高2年だった16年に日本人史上初のユース五輪で金メダルを獲得し、一躍東京五輪でのメダル獲得候補として注目された。

昨年はけがなどが重なり、思うような結果は残せなかったが、今年に入り復調傾向にある。今月上旬にロシアで行われた国際大会でも金メダル、さらに大会最優秀選手を獲得した。

その実力は、先週末にスコットランド・グラスゴーで行われた世界戦で2回衝撃のTKO勝ちを収めたWBA世界バンタム級王者井上尚弥も認める。IBFの対抗王者エマヌエル・ロドリゲス戦へ向けたスパーリングで堤と複数回手を合わせ、「緊張感がありましたね。反応が早いので、どちらに集中力があるか、ミスしないのかの勝負でした」と話している。

いわば「アマチュア界のモンスター」候補として、期待が高まる。

【女子】ロンドン五輪から採用された女子にあっては、いまだ五輪出場者はいない。ロンドン時にはお笑いコンビ南海キャンディーズのしずちゃんこと山崎静代の挑戦で話題になったが、五輪の壁は高かったのが現実だった。だが、東京五輪を来年に見据え、関係者が男子よりメダル獲得の好機があると見通すほど、人材はそろっている。

昨年の世界選手権では男子がメダルなしに終わる中、2人の獲得者を輩出した。

1人目は和田まどか(24=福井県職)。極真空手で日本一となり、神奈川・田奈高2年でボクシングに転向。14年も含め、世界選手権2度の銅メダルを手にし、現在は日本の「顔」と言える。転向した理由は08年北京五輪で柔道、レスリングの格闘技で女子選手が躍動する姿を見たから。五輪のためだけに拳を振ってきて、その最高の舞台が母国で待つ。

2人目は並木月海(20=自衛隊)。同じく昨年の世界選手権銅メダリストは、五輪階級のフライ級で表彰台を射とめた新鋭で、競技歴は8年。3歳で始めた空手は、初出場した千葉県の幼年大会決勝の相手がキックボクシング界の神童、那須川天心だった。「思い切り蹴られた記憶が。衝撃ですよね!」と明るく振り返り、以降も親交は厚く、「負けてられない」と燃える。低身長を補う踏み込みの速さと強打は日本人離れし、「海外の選手とやっても通用する」と自信はある。男子の堤が優勝した今月のロシアでの国際大会でも頂点に立っているなど、一発の強さを武器に地位を築きつつある。

リオ五輪までは3階級で、しかも各12人しか出場できない激戦に苦しんだ。東京五輪は5階級に増える計画で、今度こそオリンピアン1号、そしてメダル1号の機運が高まる。【阿部健吾】