「戦うシングルマザー」と呼ばれる王者吉田実代(31=EBISU K,S BOX)が初防衛に成功した。WBCアジア同級王者シー・リーピン(石麗萍(21=中国))の挑戦を受け、3-0の判定勝ちをおさめた。身長7・7センチ、リーチ6・5センチも劣るハンディは接近戦で埋め、ボディー連打を駆使。4回には強烈な左フックを打ち抜くなど、手数でも上回った。

観客席で熱い声援を送っていた長女実衣菜(みいな)ちゃん(4)をリングに上げて親子で観客からの大きな拍手を浴びた。愛娘から「ママ、おめでとう」と祝福を受けた吉田は「まだまだ自分は甘いと思うので、一からやり直して1日でも早く王者でいたい。もっと格好いい姿をみせたいと思います」と決意を新たにした。

大みそかの大舞台を想定し、先月8日から今月23日まで鹿児島県の実家に実衣菜ちゃんを預け「私は娘にボクシングをやらせてもらっている」との意識を胸に練習に集中した。元WBA世界スーパーフェザー級王者内山高志氏、元日本バンタム級王者益田健太郎氏の指導を受け、新たに週1回ペースで自衛隊体育学校にも足を運んだ。ロンドン五輪代表の須佐勝明氏からのアドバイスをもらい、アマチュアのトップ選手とのスパーリングも消化。筋トレと食事制限で体脂肪率も10%近くまで絞るなど「勝率を1パーセントでも上げたい」とこだわった。プロ初となるKO勝利を挙げるために準備してきた。

インパクトある試合内容を追求していた。「爪痕を残したい」と臨んだV1戦は狙っていたKOはならなかったものの、判定勝ち。悔しそうな表情も浮かべた吉田は「自分もKOやダウンを奪うために練習してきたのに、やってきたことが出せなかった」と反省も忘れなかった。