史上初となる新日本プロレス東京ドーム2連戦は両日で計7万人超を動員し、大成功に終わった。

世界中にファンを持ち、今も成長を続ける団体の秘密について、約30年にわたり裏方で支えてきた菅林直樹取締役会長(55)に話を聞いた。【取材・構成=高場泉穂】

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菅林会長は「06、07年ごろはドーム大会をやめるか、ぐらいまでいったんです」と不振の時代を回想した。当時はアリーナとスタンド1階席だけ。空席だらけでも何とか続けていたが、12年に親会社ブシロードの傘下となって以来、木谷オーナーによるPR戦略が成功。エース棚橋弘至に続き、新たなスター・オカダも誕生し、リング内も充実。観客動員はV字回復した。18年半ば、20年の1月4、5日が土日であることに気付いた菅林会長が「このタイミングを逃すと何年もいい曜日がめぐってこない」とドーム2日間をおさえた。

リスクもあった。「両方客席が埋まらなかったら、赤字プラス、イメージダウンにもなる」。2日間充実したカードを用意できるか検討し、さらに営業、幹部会で話し合うなど根回しに1年がかかり、昨年の大会で発表に至った。2年前の段階で武道館3連戦や大阪、福岡など地方のビッグマッチも満員。だから、「ちょっとは自信があったんです」。今年はドーム2連戦の満員に続き、きょう6日の東京・大田区総合体育館大会の前売りも完売。不安は杞憂(きゆう)に終わった。

世界中で人気を得る理由は1つにとどまらない。菅林会長はきっかけの1つとして、13年にテレビ放送された野毛道場寮のリフォームを追った番組「大改造!劇的ビフォーアフター」を挙げた。地上波で流れたことで、チケットの売り上げ復活の「タイミングと重なる」と明かす。16年からは芸能事務所アミューズと提携し、真壁、棚橋らがバラエティー番組などに出演し、知名度アップにつなげた。14年に開始した動画サービス「新日本ワールド」の存在も大きい。会員数約10万人中、約4割が米国、英国などの外国人。海外から来るファンも「ドームの観客動員にかなりプラスになっている」という。

選手だけでなく、営業、映像、グッズ班などの裏方を含めた約100人の社員が団結して興行を作りあげる。菅林会長は「お客さんが入っている、というのが社員の元気がよくなる理由」。ただ、「落ちるのはあっという間。2回ほど経験しているのでね(笑い)」と今の状況に慢心はしない。現在構想するのは、ブランドの追加。国内外のファン増加とともに興行数も200を数えるが、「これ以上増やすのは選手に無理を強いることになる」。2チームに分かれて国内外それぞれを回り、より多くのファンに生の試合を届ける夢プランを明かした。