GHCヘビー級選手権試合は王者の潮崎豪(38)が、杉浦貴(50)との50分を超える戦いを制し、6度目の防衛に成功した。勝利後声高らかに「アイ アム ノア」と叫んだ。

今年1月に王者となり、さまざまな思いの詰まったベルトを誰にも渡さなかった。09年6月13日、最後のリングとなった故三沢光晴さんのパートナーとして戦った。突然の別れとなった翌日、悲しみをこらえながら力皇に勝利、初めてGHCヘビー級のベルトを巻いた。その姿に嫉妬した杉浦に6カ月後の12月6日、初めてベルトを奪われた。

因縁の相手に対戦を持ち掛けられ「運命を感じる」と強い思いで臨んだ。さらにこの日、解説席に座ったのはかつて付け人を務めた小橋建太。満身創痍(そうい)で戦う後輩に「チャンピオンはどれだけ体を痛めても弱音を吐かず、リングに立ち続けなければいけない」とエールを送った。

「お互いの気持ちの詰まった戦いだった」と言うように、目まぐるしく入り乱れる展開ではなく、お互いに技を1つずつぶつけ合う、力と力の勝負が続いた。中盤はリング上で倒すことが無理だと感じたのか、杉浦が場外マットを外し、硬い床に潮崎を打ち付けるシーンも見られた。

「どちらかが倒れるまで打ち込むしかない」。お互いに意識がもうろうとする中、潮崎の勝利への執念がわずかに上回った。何度も返されたが、ラリアット3連続で3カウントを奪い、タイトルを守り切った。勝利後は、リング上で「12月6日、俺にとってとても意味のある戦いができた。杉浦貴ありがとうございました」と激闘を繰り広げた相手をたたえた。

1年間頂点に君臨し続けたが、これで終わりではない。試合後には57歳の武藤から、この日10年ぶりの開催が決まった来年2月の日本武道館大会での挑戦を受けた。「いつでも誰の挑戦でも受ける。武道館にふさわしい、GHCヘビー級の戦いを見せる。プロレス界をノア色に染めます」。ノア20周年を最高の形で締めくくった潮崎は、背負ってきた2人の魂を受け継ぎ、来年も王者であり続ける。