58歳の武藤敬司が、史上3人目となるヘビー級シングルの「3大メジャー」制覇に挑む。12日、ノアでは実に11年ぶり開催となる日本武道館での大会で、GHCヘビー級王者の潮崎豪(38)と対戦する。昭和、平成の時代に新日本のIWGPヘビー級を4度、全日本の3冠ヘビー級を3度獲得した。令和には、新たなメジャータイトルを「史上最年長」の記録つきで手にする意気込みだ。
昨年12月のノアの代々木大会だった。武藤はGHCヘビー級王座防衛に成功した潮崎に、対戦を要求した。「年取って老いぼれているけど、俺だって夢を追い求めていいだろう。俺の夢につきあってくれ。日本武道館ベルト挑戦させてくれ」。潮崎の「いつ何時でも誰の挑戦でも受ける」との快諾で、12日の対戦が正式決定した。
近年は引退と背中合わせのプロレス人生だ。昨年1年間、頂点に立ち続けた20歳下の潮崎への挑戦には批判的な声もあった。18年3月、変形性ヒザ関節症で金属製の人工関節を両膝に埋め込む手術を行った。長年のプロレスによる両膝の酷使で、一時は歩くことも困難だった。約1年後の欠場を経てリングに復帰した。
武藤 (批判は)クソくらえだ。ただ、正直自分でも悩んだ。俺の存在というのがプロレス界にとってマイナスになるんじゃないかと。でも、出ないとゼロで終わってしまう。どうせなら出て批判を浴びた方がいい。出て何か言われてもゼロではない。何かは生まれる。
この1年はコンディションが整い、力強さも戻ってきた。昨年8月には手術後初のシングルマッチで33歳下の清宮と対戦し、27分間の戦いを制した。今年1月31日の後楽園大会では、潮崎から足4の字固めでギブアップを奪って前哨戦を制した。5日の調印式では「90分やる体力がついた」と話すなど、スタミナ面の不安もない。
新日本のIWGPヘビー級、全日本の3冠ヘビー級、ノアのGHCヘビー級の「3大メジャー」制覇は過去に高山善広と佐々木健介の2人しかいない。50代でメジャータイトルを獲得したのは、全日本3冠ヘビー級の天龍源一郎(00年50歳、02年52歳)だけだ。昭和、平成、令和の3つの時代をまたいだベルト戴冠となれは、史上最年長の記録もついてくる。
58歳の今も挑戦を続ける背景には、新日本入門時から指導を受けたアントニオ猪木の影響がある。海外での興行や異種格闘技戦など、さまざまな仕掛けをそばで見てきた。「猪木さんはプロレスを含め、常に攻撃型のスタイルで、チャレンジしていた」。偉業達成は同世代、そして閉塞(へいそく)感のただよう日本へのエールにもなる。「コロナ禍で年寄りが姨捨山(うばすてやま)に追いやられているような感じの(暗い)世の中。みんなに、元気を与えたい」。時代の流れと自分の体に向き合いながら、ムチを打ち、武藤が新たな歴史を作る。【松熊洋介】
◆武藤敬司(むとう・けいじ)1962年(昭37)12月23日、山梨県生まれ。84年に新日本入門。同日入門の蝶野、橋本と「闘魂三銃士」と呼ばれる。同年10月蝶野戦でデビュー。その後、米NWAに参戦。同化身の「グレート・ムタ」としても活躍。02年に全日本に正式に入団し、その後11年まで社長に就任。13年「WRESTLE-1」を旗揚げ。20年3月よりフリー。娘はタレントの武藤愛莉。188センチ、110キロ。
<3大メジャータイトルと年齢>
58歳の武藤がノアGHCヘビー級で初の王者に輝けば、史上初めて50代での初戴冠となる。
▼新日本IWGPヘビー級 初戴冠の最高齢は25代王者・天龍源一郎の49歳10カ月(99年12月)。戴冠時の最高齢もこの時の天龍。
▼全日本3冠ヘビー級 初戴冠の最高齢は48代王者・大森隆男の44歳8カ月(14年6月)。戴冠時の最高齢は29代王者・天龍の52歳8カ月(02年4月)。
▼ノアGHCヘビー級 初戴冠の最高齢は23代王者・鈴木みのるの46歳9カ月(15年3月)。戴冠時の最高齢は31代王者・杉浦貴の47歳10カ月(18年3月)。

