WBA世界ライトフライ級スーパー王者京口紘人(27=ワタナベ)が、米デビュー戦でV3に成功した。

英大手プロモーターのマッチルームと契約しての初戦。2度目の世界挑戦の同級10位アクセル・アラゴン・ベガ(20=メキシコ)に格の違いを見せた。

5回、1分半ごろの打ち合いで、ベガがパンチを振るった後に右拳を痛めて、背中を向けてロープに下がる。京口が追い掛けてパンチを浴びせたところで、レフェリーが割って入り、試合をストップした。

昨年コロナ感染で中止を乗り越え、日本人として5人目となる米国で防衛成功となった。

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鬱憤(うっぷん)を晴らす米デビュー戦となった。「これまで経験したことはない」という身長で10センチ以上低い挑戦者に、得意のボディー、アッパーを次々と打ち込んで圧倒した。日本人として米国での防衛戦は8人目だったが、5人目となる勝利を飾った。仲のいい井上尚弥に肩を並べることができた。

昨年11月には地元大阪でタイ人相手の防衛戦の予定も、前日計量後にコロナ感染でまさかの中止となった。気持ちも落ち込み、年が明けても不眠症の後遺症を感じていた。昨年末にマッチルームと日本人として初めて契約したことで奮起。米国旅行は小学時代にグアム島だけ。あこがれの米国での世界戦で、その期待にも応える白星となった。

京口は大商大を卒業すると16年にプロ入りした。アマ時代から目をかけてくれた井上トレーナーに勧誘された。アマで優勝は国体だけだったが、強打を見込んでのもの。寮長でもあったトレーナーと二人三脚で、2階級制覇を果たすまでに成長した。

その井上トレーナーが昨年でジムを退職した。コロナ禍もあり、ジムは総力を挙げてバックアップへ一丸となった。同行は通常3、4人だが、ベテランの伯耆トレーナーをチーフに、同学年で同時入門した相棒の日本ミニマム級谷口も同行。6人がサポートした。

食事面では現地の日本人会の全面協力を受け、大量の日本食材から調理器具を準備してくれ、深町マネジャーが料理の腕をふるった。後援者から贈られた約180万円という水素吸引器で体調維持。ホテルに完全隔離のバブルにも、京口は「日本で過ごしているのと何も変わらない」とストレスを感じることもなかった。

渡辺会長は「内山の時と同じ。チーム京口で結束した」という。内山はジム初の世界王者で日本歴代3位の11度防衛した。10年の世界初挑戦時、マンツーマン指導していたトレーナーが直前に突然退職。大ピンチにスタッフ全員が役目を担って結束した。

この数年で内山、河野、田口と次々引退し、京口が唯一の世界王者となった。京口も「みんながサポートしてくれたおかげ」と感謝。今回もジムが一丸でベルトを守ることができた。

米国で勝利を飾ったことで、今後のプランもどんどん広がりそうだ。陣営では年内にあと2試合はこなしたい考え。国内開催の場合は、昨年中止となった同級11位タノンサック・シムシー(20=タイ)が優先候補となる。