ウィル・オスプレイ(27)が、IWGP世界ヘビー級初代王者の飯伏幸太(38)を破り、新王者に輝いた。

若さと勢いに実力も伴った。「世界」と名の付いた新ベルトを巻くのにふさわしい激闘を制した。飯伏の2度のカミゴェを食らい、誰もが飯伏の勝利を確信したフォールをカウント2で返した。25分を超え、残っていた体力で王者に何度も蹴りを浴びせ、リングにたたきつけた。最後はこん身のストームブレイカーが決まり、飯伏を沈めた。

思い出の地で悲願の頂点に立った。両国国技館は16年4月、新日本プロレスでのスタートを切った場所。英国での修業時代にオカダに導かれてリングに立ち、飯伏と同じようにジュニアヘビー級を制してヘビー級に転向した。2人を超えたことをリング上で証明するべく、今年3月21日のニュージャパンカップ決勝で鷹木を破り飯伏への挑戦権を獲得した。その後毎試合セコンドに付いてサポートしていた恋人のビー・プレストリーにオスカッターを見舞い、仲間割れ。邪念を除き、この試合に集中した。

勝利後マイクを手に取り「まだ完結していない。リベンジだ」と次期防衛戦の相手にオカダの名前を叫び、リングに呼び出した。今年1月4日東京ドーム大会で敗れた相手にやられたままでは王者として納得できなかった。ところがこれに鷹木が乱入。「東京ドームでのオカダへのリベンジ? そんなものは誰も覚えちゃいねえ。NJC1回戦でオカダは俺に負けた。そんなオカダが挑戦できるなら、NJC準優勝の俺にまず権利があるんじゃねえか」と主張。マイクを向けられたオスプレイは「最初に(鷹木)信悟。次にオカダだ」と受け入れ、ターゲットを変更した。

「防衛戦を通して、世界で俺より強いプロレスラーはいないことを教えてやる」。27歳で頂点に立ったオスプレイは堂々と語った。この日、ユニット「UNITED ENPIRE」(UE)はヘナーレを加え、鷹木らに完勝。1月東京ドーム大会では全敗し、存続も危ぶまれたが、見事に建て直した。オスプレイのセコンドを務めていたコブは、同試合後意識のない飯伏にツアー・オブ・ジ・アイランドを浴びせ「神」を葬り去った。「世界で最も価値あるベルトだと証明していく」。仲間とともに新日本の頂点を勝ち取ったオスプレイは、新たなベルトの歴史をつくり始める。【松熊洋介】