格闘技イベントRIZIN28大会が13日、東京ドームで行われる。同会場での総合格闘技は18年ぶり。夢の祭典がいよいよ開幕する。

日刊スポーツでは同大会の見どころを紹介する。第7回は「那須川天心対3人スペシャルマッチ(1人1回3分×3)」に出場する那須川天心(22=TARGET/Cygames)と、大崎孔稀(21=OISHI GYM)、HIROYA(29=TRY HARD GYM)、「X」。

44戦無敗の神童が新たな挑戦をする。もともと、13日はRIZINとは別に、K-1王者・武尊戦が予定されていた。しかし、武尊のケガで延期となった。そこへ5月予定のRIZINが緊急事態宣言でスライドし、那須川が出場することになった。「とにかく試合がしたかったし、地上波生放送で東京ドーム。日本を盛り上げるために、格闘技を知ってもらうために出ないといけないなと」と出場への思いを語った。

自身のユーチューブで対戦相手を公募するも、条件面などで成立せず。そんな中、今月1日に自ら「3人の選手と1回ずつ戦いたい」と仰天プランを発表した。約500人の応募の中から3人の相手が決まった。キック封印のルール。2人目のHIROYAは75キロで、62キロの那須川とは13キロの体重差がある。「みんなが思っているほど簡単じゃない」と危機感をあらわにする。朝倉未来が「天心君は危ないかも」と言っていたことを伝え聞いて「本当にその通り。誰がどう見ても危ない」と素直に受け止めるほど危険な戦い。RIZIN榊原CEOは「天心の得意とするキックがあると、独壇場になる」とあえて不利な条件を提示し、試練を与えた。

ボクシングルールでの試合は、非公式ながら唯一“敗れた”18年12月のメイウェザー戦以来。大崎には「早くから意志表示していた。勢いのある選手。集中しないといけない」と警戒。幼いころから見ていたHIROYAには「一発の恐怖はあるが、やるしかない。胸を借りるつもりで思いっきりいきたい」と決意を語った。当日発表される3人目のXを聞いた時には「びっくりした。ここでこの選手が来るかと。格闘技のファンからしたらうれしい選手だと思う」と正直な気持ちを明かした。

「いつ何時試合が来ても、用意しておくというのが自分の中でのファイター」。体重差があろうが、ルールが変わろうが、全く気にしない。「3人ともKOするつもりだが、全員フルで来ると結構きつい。茶番とか言ってる人もいたけど、今までで一番難しい試合」。来春のボクシング転向まで残り4戦。武尊との一戦はケガせずに迎えたい。那須川は自ら危険な戦いに飛び込み、また新たな伝説を作る。

1人目の相手となった大崎は21歳ながら、すでに30戦を戦い24勝(16KO)。那須川と同じRISEを主戦場とする。那須川について「最強、完璧」と言葉を並べた。「(連絡来た時は)うれしかった。楽しみもあるが恐怖もあった。自信は半分くらい」と正直な気持ちを明かした。当初はキックルールで申し込んだが「パンチもできるし、KO率も高い」とボクシングルールを受け入れた。

数日前の決定にも「減量もなくていつも通り。コンディションは悪くない」と語った。ジムの仲間に手伝ってもらい、スピードやタイミングの取り方に重点を置いて練習した。わずか3分の戦い。守っていては勝てない。「引くつもりもない。数%でも可能性がある限り、勝ちに行く」とわずかな隙を突いて勝機を見出す。

2人目のHIROYAは「数週間前は想像もしていなかった。僕にできる仕事をやろうと思っている」と冷静に語る。那須川については「誰もが知っているが、パンチも蹴りも攻撃も防御も速い」と話す。昨年末には、ユーチューバーのシバターの相手Xとして登場。総合格闘技の練習をしていない中、途中の動きがタップしたように取られ、敗戦となったが、刺客としての役割をしっかり果たした。

10年にインターナショナルスクール卒業後、現在のジムを開業。「後進の指導もしていて、格闘技界を盛り上げて欲しい」という榊原氏から直接オファーを受け、快諾した。「選手としてより、裏方として支えたいと思っている」と今年中には引退試合を行うつもりだ。失うものはない。「スピードでは勝てないので、リングで向き合ってから考えたい。一発当たれば(KOも)あり得ると思う」。那須川が一目置く存在のHIROYAが、一発逆転を狙う。【松熊洋介】