格闘技イベントRIZIN28大会が13日、東京ドームで行われる。同会場での総合格闘技は18年ぶり。夢の祭典がいよいよ開幕する。日刊スポーツでは同大会の見どころを紹介する。

最終回となる第8回は、メインで行われる「喧嘩道スペシャルマッチ」朝倉未来(28=トライフォース赤坂)VSクレベル・コイケ(31=ボンサイ柔術)。

「人生最大に追い込んだ」。毎日の練習で体はボロボロ。筋肉痛で悪夢を見る日が続いた。3日に練習を終え、全身アザだらけの体を少し休め、本番に備えた。4月にユーチューブで元K-1王者の魔裟斗と対談。「結果を出した人が『努力していた』と言っていた。世界チャンピオンの言葉は説得力が違う」。ミット打ちや走り込みなど練習量を増やし、体力強化に取り組んだ。

昨年末の大会(VS弥益)からスタイルを少し変え、自分から積極的に攻めるようにした。今回、寝技に強いクレベルとは打撃戦に持ち込みたいと考える。フィニッシュ率の高い相手だが、朝倉が負けた2敗はいずれも判定。KOも一本負けもない。「理想の展開は、テークダウンを1度も取られないで判定勝ちにすること。根性のある方が判定で勝つ」と予想する。寝技で苦しい展開になっても「最後の最後まで逃げる」と簡単にギブアップはしないつもりだ。

極真空手で格闘技人生をスタートさせ、高校時代は路上でのけんかに明け暮れた。その後地下格闘技からアウトサイダーに参戦。10年以上格闘技に時間を費やしてきた。7月には29歳になる。昨年末のテレビ番組では「30歳までには引退したい」とも語っていた。昨年には選手の育成プロジェクトを立ち上げた。今年7月には、自身がアドバイザーを務める、格闘技経験の少ない選手による「1回1分」の大会「Breaking Down」の開催も決定するなど、後進のための活動も積極的に行っている。

最近はSNSなどで「死を覚悟したり、普通の人が体験できない最高の瞬間を感じたり、底辺と成功を経験させてもらった。悔いのない人生を生きる」と語ることもあった。「地下格闘技合わせると30戦以上。寿命縮めたな。今回で辞めるかもしれないし。1年かかるケガだったら辞める。最後になってもいいように出し尽くす」。これまでにない朝倉の覚悟を持った戦いがいよいよ始まる。

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33戦で27勝、うちKO、一本勝ちが25回と驚異のフィニッシュ率を誇るクレベルは「朝倉とは昔からやりたかった」と念願の対戦を喜んだ。打撃戦をもくろむ朝倉に対し「寝技の自信はある。自分の一番信じている寝技を仕掛ければ一本取れる」と自信をみなぎらせた。前回3月の大会では摩嶋一整に下から関節をキメにいき、2回一本勝ち。レベルの高いグラップリング技術を見せた。きめられそうになっても「最後まで逃げる」という朝倉には「絶対にタップしないと壊れちゃうよ」と忠告した。

今大会にも出場するソウザらとともにボンサイ柔術で技術を磨いた。08年にDEEPでデビュー。さまざまな団体で勝利を重ね、昨年末からRIZINに参戦し、カイル・アグォン、摩嶋と連勝。榊原CEOや朝倉に認められ、東京ドームのメインに抜てきされた。17年にはポーランドで、5万人の大観衆の中でKSWフェザー級タイトルマッチに勝利。「最初はちょっと緊張したが、今はあまり変わらない」と大舞台もものともしない。

勝利した後には「斎藤(裕)さんと試合をしたい」と昨年11月に朝倉を破った現フェザー級王者との一戦を見据える。指導を受ける鈴木博昭氏やジムの仲間たち、静岡で一緒に暮らす両親のサポートにも感謝する。「チームも鈴木も柔術のメンバーも勝利を信じている。私は全然怖くない」と力強く語った。「これはゲームではない。本物の試合を見せる」。最強の打撃力を誇る朝倉を、最高の寝技で仕留める。【松熊洋介】