WBC世界スーパーフェザー級王者オスカル・バルデス(30=メキシコ)が判定で初防衛に成功した。同級14位ロブソン・コンセイサン(32=ブラジル)と、09年のアマ時代に黒星を喫して以来となる対戦。決定的な場面はなく判定に持ち込まれたが、3-0での判定勝ちとなった。採点は117-110、116-112と意外な差がついた。試合前はドーピング違反騒動が起きたが、第2のホームでプロでの雪辱となった。

コンセイサンが初回からジャブをつき、手数でも上回ってペースを握った。バルデスはなかなか手が出ず、踏み込んでもいけなかった。6回からようやくプレスをかけていき攻めるも、コンセイサンに足を使ってかわされる展開に。9回にはコンセイサンが後頭部へのパンチで減点となった。

終盤バルデスが攻めるも、最後まで捕まえられずに判定となった。バルデスが少年時代を過ごしたという第2の故郷。地元のヒーローが勝者になったにもかかわらず、歓声とブーイングが交錯していた。

バルデスは8月13日のドーピング検査で、禁止薬物フェンテルミンが陽性反応を示した。B検体も陽性だったが、陣営は「ハーブティーからでは」と主張。試合どころか、王座剥奪、資格停止などもあり得たが、WBCは事情聴取した上、再検査では陰性だったこともあり、現地コミッションとともに試合を認可した。

薬物が食欲抑制薬でパフォーマンス向上には影響なく、別機関の規定では試合時の検査のみ違反とすることなどが理由だった。WBCは承認料全額を検査基金に寄付し、バルデスには自費での半年間の抜き打ち検査、1年間保護観察などの制裁を科しての強行開催。これには内外から大きな批判が起き、物議を醸しての試合だった。

顔に多くの傷痕の残るバルデスだったが「勝ったのは私で次に進める。難しい試合でKOできずに申し訳ない。次は倒す。ビッグマッチをやりたい」と強気に話していた。

コンセイサンは五輪に3大会連続出場し、自国開催の16年リオ大会ではブラジルにとって初の金メダル獲得となった。バルデスには09年のパンナム大会で僅差も勝利して優勝していた。

アマ出身らしいアウトボクシングに徹したが、まさに「ホームタウンデシジョン」で、17戦目の世界初挑戦に失敗。ブラジル6人目の世界王者を逃し、試合後は両手を広げて終始苦笑いで、判定に異議を示していた。