G1優勝決定戦で、まさかのアクシデントが起こった。Aブロックを勝ち上がった飯伏幸太(39)と、Bブロック覇者のオカダ・カズチカ(33)との大一番。激闘が続いたが、20分すぎに、飯伏がトップコーナーから大技の飛び技フェニックススプラッシュで自爆し、右肩を負傷した。25分37秒、レフェリーストップで、オカダが予想外の形で14年大会以来7年ぶり3度目のG1制覇を果たした。

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突然の幕切れだった。リングマットに顔面と右肩などを強打した飯伏の動きが止まる。レフェリーが声をかけても苦悶(くもん)の表情を浮かべ、立ち上がることはできない。25分37秒、レフェリーストップ。オカダはコーナーの下に座り込み、腕を押さえて苦しむライバルをぼうぜんと見つめていた。前代未聞のG1制覇だった。

開始から激闘を繰り広げた。オカダが持ち前の高いドロップキックを決めれば、飯伏は必殺技レインメーカーをかわして、ラリアットを放つ。一進一退の攻防が続く中、20分過ぎだった。オカダに必殺技のカミゴェを浴びせ、優勢に立った飯伏が、コーナートップから大技の飛び技フェニックススプラッシュを仕掛ける。オカダに間一髪避けられると、マットに自爆して動けなくなった。

オカダにとってはまさかの結末。ゴングが鳴ると心配そうに歩み寄り「もう1回(戦おう)」と言いながら人さし指を立てた。若手に抱えられながら花道を引き揚げる際には「飯伏幸太、不完全燃焼だ。またやろうぜ」と呼びかけた。望んだ形での勝利ではない。それでも、トロフィーと優勝旗を受け取ると「レフェリーストップとなったが、胸張ってチャンピオンだと言いたい。日本全国で熱い戦いをしてきた。勝ちは勝ち」とモヤモヤした気持ちを振り払うようにファンに向かって叫んだ。

強気な発言のリング上と違い、バックステージでは本音を漏らした。飯伏のことを振られると、突然言葉に詰まった。「やっぱり…物足りないですよ。でもここから盛り上げていきたい。僕が元気よく立ち上がる姿を見せないといけない」。ライバルの無念も背負いながら、再び主役として新日本を盛り上げていく。【松熊洋介】

◆オカダ・カズチカ 1987年(昭62)11月8日、愛知県安城市生まれ。中学卒業後に闘竜門に入門し04年8月、16歳でメキシコでデビュー。07年8月に新日本入り。12年には棚橋を下し、IWGPヘビー級王座を初めて獲得。同年、初出場のG1クライマックスで史上最年少優勝。14年に2度目のG1制覇。IWGPヘビー級は第57、59、63、65代王者。191センチ、107キロ。妻は声優の三森すずこ。