ボクシング元世界3階級制覇王者田中恒成(26=畑中)が約1年ぶりの再起戦に向け、WBAスーパー、IBF世界バンタム級王者井上尚弥(28=大橋)との初スパーリングに臨んだ。4日、横浜市の大橋ジムを訪問し、井上と4ラウンドにわたって拳を交える実戦トレーニングを消化した。

「誰とやるときも初めては緊張します」という田中は1回、距離感を図りながら井上のスピードやフィジカルを確認。2回から井上から距離を詰められ、接近戦となると相手アッパーをしのぎながら、3回はスピードを生かしてパンチを返した。世界3階級制覇王者同士のスパーリングは緊張感あふれ、ピリピリムードが漂ったという。

「今日は結構、打たれました」と素直な感想を口にした田中は「(やりたいことが)あんまりできなかった。させてもらえなかったという言い方のほうが正しいかもしれない。1ラウンド目に距離感をつかみたいというのがあったんですけど。それが最後までできなかった」と自らの課題を挙げた。

井上との初スパーリングには「日本にも世界でめちゃくちゃレベルの高い選手がいる。その選手とできる経験っていうのは、やっぱり大きい」とうなずきつつ「やっぱりこういうところがすごいんだなという部分が多かったです」と強調。井上が相手の良く観察する姿勢やカウンターの鋭さ、また相手の準備前に距離を詰めるなど隙を突く動きに強さを感じたという。「いろんな面ですごく見ているなと思いました」と口にした。

昨年大みそかにWBO世界スーパーフライ級王者井岡一翔(志成)に敗れて以来、約1年ぶりの再起戦として、田中は12月11日、名古屋国際会議場でIBF同級5位石田匠(29=井岡)との52・5キロ契約体重10回戦(名古屋)が組まれる。世界ランカー同士の対決は単なる再起戦ではなく、生き残りを懸けた再び世界に返り咲くための「前哨戦」となる。

「12月の試合に向けてのトレーニングをしてきているので、それを一切、消してということはもちろんしない。でも尚弥さんとスパーできるってことも、もちろん大きなことなので、両方を大切にしてやりました」と意識を高めた田中は5日も2日連続で井上とのスパーリングを予定。「今日は反省が多いので、明日どれだけ修正できるかというところです。12月の試合に向けて、とても大切な2日間になる」と気持ちを高揚させていた。