ボクシングWBAスーパー、IBF世界バンタム級王者井上尚弥(28=大橋)が挑戦者来日済みに感謝し、防衛戦開催に向けて新型コロナウイルス予防に向けて細心の注意を払う姿勢を示した。14日に東京・両国国技館でIBF同級5位、WBA同級8位のアラン・ディパエン(30=タイ)との防衛戦(WBA6度目、IBF4度目)を控える。2日には横浜市内のジムで最終調整した。

新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」の世界的な拡大による水際対策の強化で、新規入国が原則禁止になる直前となる11月28日に挑戦者が来日した。フィギュアスケートのGPファイナル中止も発表される中、井上は防衛戦開催を感謝しながら「感染者は減っていますが、まずは対戦相手が無事に来日したことを無駄にしないように残りの日々を感染に気をつける。気を抜きたくない。これで前日に陽性になったら、元も子もないので。試合ができなくなる、中止になる緊張感は常にあるので」と厳しい表情で口にした。

防衛戦への集中力も研ぎ澄ませている。12勝中11KO勝ちというハードパンチャーが対戦相手だが、下馬評では井上が優位、早期決着も予想される。井上は「周りの声や試合に対する予想もあるけれど、早く倒すというような気に乗ってスタートからいったら、本来のボクシングはできない。対戦相手が誰でもいつも通りの試合を心掛けたい」と強調した。

11月27日に米ニューヨークで開催された3団体統一ライト級タイトルマッチで王者テオフィモ・ロペス(米国)が挑戦者のIBF同級1位ジョージ・カンボソスJr.(オーストラリア)に判定負けする波乱があった。1回から猛攻したロペスが右フックでダウンを喫する劣勢で、中盤以降に追い上げて10回にはダウンを奪い返したものの、判定負けとなった。試合ダイジェスト映像を見たという井上は「(ロペスが統一王者)ロマチェンコを倒した次だから、楽々と倒そうというところがあったと思う。そこに自分の落とし穴がある」とうなずいた。その上で「ディパエンがどうのこうのではなく、自分の気持ちの方なのだと思う。この試合をこの時期に見ることができて、自分の精神コントロールというか『あ、ここが落とし穴だな』というのがあった。ボクシングはクールにいかないといけない」とあらためて気を引き締めていた。