同級王者井岡一翔(32=志成)が王座統一戦につなげる4度目の防衛に成功した。約2週間前に対戦発表された同級6位福永亮次(35=角海老宝石)の挑戦を受け、3-0の判定勝ち。区切りの10度目大みそか決戦を白星で飾った。1度は中止が発表されたIBF世界同級王者ジェルウィン・アンカハス(29=フィリピン)との王座統一戦は来春以降に実現の見通し。待望の大一番に向けて前進した。

【関連記事】井岡一翔―福永亮次ライブ詳細

10度目大みそかのリングで22年の大一番を意識した。井岡が「仮想アンカハス」として迎えた同じサウスポーの福永を攻略。「気持ちをつぶす」とショート気味の強打をねじ込み、強烈なワンツーで挑戦者の鼻から出血もみえた。「良い流れだと思ったが、頭もぶつかっていてケガやカットするのも嫌」。あえて強引なKOを狙わず、格の違いをみせる完勝劇に「これも1つの井岡のスタイル。痛めたりダウンする必要もない。僕の自由があると思う」と余裕の笑みを浮かべた。

11年にWBA世界ミニマム王者として臨んだ2度目の防衛戦から数え、2ケタに乗る皮切りの舞台だった。1番の思い出は黒星。18年にマカオで判定負けを喫したドニー・ニエテス戦を挙げ「心が何も満たされない。時だけが進んで、自分だけが取り残された気持ち」と悔やむほどの負けず嫌いな顔もみせた。32歳とベテランの域に達したが「初めての大みそかを思い出した。初心に戻って戦うことに意味がある。これで次に戦う理由もできた」とうなずいた。

新型コロナウイルス変異株「オミクロン株」の影響で中止となったIBF同級王者アンカハスは22年2月にV10戦を予定。両陣営が「合意済み」という王座統一戦は同年春以降に組まれる見通しだ。「アンカハス選手と来年、統一戦ができるように進めてもらう。(陣営に)我慢強く動いてもらい、さらなる目標に向かって頑張る」と決意も新た。22年のスーパーフライ級ベルト統一へ、さらに井岡がギアを上げる。【藤中栄二】

◆世界スーパーフライ級戦線 WBAスーパー、WBCフランチャイズ王者ファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)が中心。21年3月、12年のライトフライ級で対戦したライバル、ローマン・ゴンサレス(ニカラグア)と再戦し、僅差で判定勝利。同10月16日に米国でゴンサレスとの3度目対決がセットされたものの、ゴンサレスのコロナ感染で延期となった。IBF王者ジェルウィン・アンカハス(フィリピン)は、この大みそかのWBO王者井岡一翔(志成)との王座統一戦が変異株「オミクロン株」感染防止対策の影響で延期に。21年4月には、ジョナタン・ロドリゲス(メキシコ)に判定勝ちし、9度目の防衛に成功。今年2月に10度目防衛戦を計画している。

◆井岡一翔(いおか・かずと)1989年(平元)3月24日、大阪・堺市生まれ。興国高で史上3人目の高校6冠を達成。東農大2年中退で09年プロデビュー。11年に当時日本最速7戦目でWBC世界ミニマム級王座、12年にWBA世界ライトフライ級、15年に18戦目の当時世界最速でWBA世界フライ級王座獲得。17年に1度引退も、18年に復帰。19年再挑戦でWBOスーパーフライ級王座を獲得し、日本初の世界4階級制覇達成。164・8センチの右ボクサーファイター。家族は夫人と1男。