搭乗した飛行機の機内で別の乗客を殴る様子が撮影されて物議を醸したボクシング元世界ヘビー級王者のマイク・タイソン氏(55)が、刑事訴追されないことが分かった。米カリフォルニア州サンマテオ郡の検察が10日、タイソン氏を不起訴にする方針を発表した。

タイソン氏は先月、サンフランシスコ発フロリダ行きの機内で、後部座席に居合わせた男性とトラブルとなり、顔面を殴打する様子を撮影した映像がメディアに公開され、衝撃を与えていた。男性がしつこくタイソン氏に話しかけ、挑発的な態度をくり返したため、堪忍袋の緒が切れて殴ったと伝えられており、男性が飲料水入りのペットボトルを投げつけ、酒に酔っていたとの報道もある。男性は流血する負傷を負ったが、重傷ではなくその場で手当てを受けるにとどまったという。ネットでは「何もないのに一般人を殴るわけがない」とタイソン氏を擁護する声が上がっていた。

検事は、報告書を見直し、司法当局が飛行機の他の乗客から回収したさまざまな動画も確認した上で起訴しない方針を決めたと説明。「事件に至るまでの被害者の行動や両者のやりとり、ならびにこの件で起訴は避けて欲しいという被害者男性とタイソン氏両者の要請」などが含まれての判断だという。事件後、駆け付けた警察官の聴取で殴られた男性は被害届を出すことを拒んだと伝えられており、タイソン氏は逮捕されずにその場で釈放されていた。(ロサンゼルス=千歳香奈子)