19年11月7日の井上尚弥-ノニト・ドネア第1戦を解析した。11回に左ボディーブローでダウンを奪った井上の判定勝利だったが、ハイレベルな強打の応酬による一進一退の名勝負だった。パンチの的中率や、相手にダメージを与えたパンチの種類などの詳細データから、7日の第2戦での井上の勝機を探る。
◇ ◇ ◇
第1戦は両選手の攻勢と劣勢が目まぐるしく交互した。2回に井上がドネアの左フックで右目尻から流血する窮地に。5回には井上の右強打でドネアがグロッギーに陥った。9回にドネアの右の直撃弾をクリンチでしのいだ井上は、11回に左ボディーブローで決定的なダウンを奪った。
採点は114-113、117-109、116-111。井上が3-0で勝利を収めた。総パンチ数は両者合わせて880発(井上474、ドネア406)、各400発超を放ったが、データ解析で両者の特徴と傾向が明らかになった。
◆的中率(クリーンヒットした確率)
井上が53%でドネアの32%を20%以上上回った。目立ったのが6回以降の数値。5回まで井上54%、ドネア43%と11%差だったが、6~12回は井上が53%と変化がなかったのに対し、ドネアは26%まで下降した。井上は終盤までスピードと動体視力は衰えなかったが、ドネアはパンチの精度、防御勘が著しく鈍ったことが分かる。
◆有効打(ダメージを与えたパンチ)
井上90発に対し、ドネア55発と大差がついた。にもかかわらず内容が接近して見えたのは、ドネアが得意の中間距離で強打をより効果的に決めていたから。得意の左のフックとボディーブローは、井上のパンチに合わせるか、打ち終わりを狙い、右ストレートは左ジャブに合わせて、クロス気味にたたき込んでいた。
◆有効打の種類
井上は右ストレート(25)と左ボディーブロー(22)が全体の52%と半数以上を占めていたが、左フック(13)右フック(13)左ストレート(10)も40%と多く、多彩なパンチを決めた。対照的にドネアは全体の87%が、左ボディーブロー(19)左フック(14)右ストレート(15)の3種類のパンチだった。
第1戦のデータ解析結果から、第2戦で井上がより確実に勝つために、以下の戦い方が有効になる。
◇後半勝負
10回以降にスピードとパンチの精度が急落したドネアの体力に伸びしろはない。井上は後半勝負に持ち込むほど、勝算は高くなる。
◇3種類のパンチを警戒
ドネアの左フック、左ボディーブロー、右ストレートを徹底警戒。カウンターやクロスに備えて、パンチの打ち終わりのガードを意識する。11回にダウンを奪った後、ラッシュした時に左フックを浴びたことも教訓。窮地からもドネアは狙っている。チャンスでも冷静に。
◇ドネアの射程圏にとどまらない
井上は前回、4回以降、足を使い、左のジャブとストレートを多用して、相手の左強打が当たる距離での打ち合いを避けて、ペースを奪い返した。第2戦もドネアの射程圏にとどまることなく、開始からスピードを生かして左ジャブから攻撃を組み立ててペースを掌握すれば、ドネアが攻め込む前に試合が終わる可能性も少なくない。【首藤正徳】

