プロボクシング元WBC世界バンタム級暫定王者の井上拓真(26=大橋)が、日本同級王者の古橋岳也(34=川崎新田)を3-0の判定勝ちで下した。WBOアジア・パシフィック・スーパーバンタム級王座に続き、日本王座を獲得して2冠となった。

序盤から試合をコントロール。ジャブや左フックなど的確なパンチを繰り出し、最後まで優位に立ち続けた。

冷静な試合運びが際立ったようにも見えたが、「自分のボクシングをさせてもらえなかった。古橋さんのスタイルにのまれてしまった。今後に課題が残る試合になった」と反省。「古橋さんの根性がすごくて簡単にはいかなかった」と相手をたたえた。

世界王座を獲得し、東洋太平洋王座は2階級制覇。17年から国内公認となったWBOアジア・パシフィック王座も手にした。日本王座も加えて手にしたタイトルは計4本。兄尚弥とは違う道の「日本人初」となる。父真吾トレーナーは「日本王座は伝統があり、この挑戦はすごく良いこと。また世界王座を目指すため、しっかり結果を残せばいい」と強調した。

スーパーバンタム級でも日本、アジアの王座を確実に確保していれば、バンタム級と2階級で世界挑戦を見据えることが可能。「フィジカル的にもスーパーバンタム級は早いかなと。適正なのはバンタム級かな」と話す一方、「スーパーバンタム級だと減量幅がない分、試合でも最後までしっかり試合でもしっかり動けます」。

兄尚弥との興行同時出場は19年11月以来、2年7カ月ぶり。会場も同じ。兄弟競演は「調整は一緒にできるので高め合いながらできる」と相乗効果があるという。前回は当時のWBC正規王者だったノルディーヌ・ウバーリ(フランス)に判定負けを喫した。嫌なイメージを払拭し、兄にバトンをつないだ。

◆井上拓真(いのうえ・たくま)1995年(平7)12月26日、神奈川・座間市生まれ。父真吾氏と兄尚弥の影響で4歳からボクシングを始め、小学校入学と同時に本格的な練習を開始。11年高校総体ピン級優勝、12年高校選抜ライトフライ級優勝の2冠。13年12月に大橋ジムからプロデビューし、のちにWBO世界ミニマム級王者となる福原辰弥を相手に判定勝利。15年7月に東洋太平洋スーパーフライ級王座を獲得し、2度の防衛後に返上。18年12月にWBC世界バンタム級暫定王座を獲得も19年11月に正規王者ノルディーヌ・ウバーリに敗れて王座統一に失敗。身長163センチの右ボクサーファイター。血液型はA。