「闘魂三銃士」の一員として90年代のプロレス黄金期を支え、長く活躍してきたレジェンド、武藤敬司(59)が現役引退を表明した。

12日、さいたまスーパーアリーナで行われた「サイバーファイトフェスティバル2022」内で、来春までに現役引退することを自ら発表。新日本、全日本、ノアのメジャー3団体のシングルとタッグ王座の完全制覇や、化身のグレート・ムタとしての活躍など圧倒的な実績を誇るプロレス界の主役が、大きな決断を下した。

   ◇   ◇   ◇

武藤が引退を決断した。名勝負を繰り広げてきたマットから降りる。主催者側から来場とともに、「大切なご報告」があるとされていた。登場すると、代名詞である「プロレスLOVE」ポーズを豪快に決め、マイクを握った。「かつて『プロレスはゴールのないマラソン』と言った自分ですが、ゴールすることに決めました。来年の春までに引退します。あと数試合はするつもりです」。引退宣言。会場は悲鳴に包まれた。

理由を「股関節が膝と同様に変形してきている」ためと説明した。「このままでは股関節も人工関節にしないといけない。そんな状態では試合はできない。断腸の思いです」と無念さを口にした。

10年に右膝の手術、18年には両膝の人工関節置換術を受け長期離脱した。今年1月からは、左股関節唇損傷により欠場。5月21日に4カ月ぶりに復帰したが「技をかけるときに股関節に痛みが走る。気持ちが落ちる」とも話していた。

ラストマッチなどは未定。引退が来春までのどの時期か、「具体的なことは何も決めていない」。化身、グレート・ムタの去就も気になるが、「もう1、2回開いたら、魔界の門も閉じて出てこられないようになるのではないか」と話すにとどめた。

84年に新日本入門。エースとして一時代を築き、同日入門の蝶野正洋、橋本真也(故人)と「闘魂三銃士」と呼ばれた。02年に全日本に電撃移籍し社長も務めた。21年11月にはノアのGHCタッグ王座「を戴冠。メジャー3団体でシングルとタッグの両王座を完全制覇。長きにわたって、プロレスの最前線を走り続けた。

「プロレスは芸術だ」「思い出とケンカしたって勝てっこない」。数々の名言も残した。プロレスを人生にたとえ、選手の頑張りを自らの生きざまに重ねるファンの共感を呼び、ともに戦ってきた。「逆に応援してくれるお客さんに力をもらった」と感謝する。節目のこの日も、ひと言に思いを込めた。「ゴールすることに決めました」-。テープを切るその日まで、「プロレスLOVE」を叫び続け、全力で走り抜ける。【勝部晃多】