来春まででの現役引退を表明しているプロレスリングマスターこと武藤敬司(59)が、プロ生活38年のゴールに向けて走り始めた。

引退ロード初戦。「THE FINAL COUNTDOWN」から「HOLD OUT」のテーマ曲メドレーが鳴り響くと、会場は大きな拍手に包まれた。先月12日の「サイバーファイトフェスティバル2022」(さいたまスーパーアリーナ)で引退を自ら発表して以来、約1カ月ぶりにファンの前に登場。試合は、5月21日以来となった。

自身の背中を追いかけ続けてきた若手のホープ清宮海斗(25)と対戦。かつて3度のシングル対戦で1度も負けたことのない相手でも、「介錯(かいしゃく)されるつもりはない」と全身全霊をぶつけた。

無駄な動きのない、いつもの洗練されたレスリングスタイル。トップロープへ足をかけるのに苦戦する様子もあったが、雪崩式フランケンシュタイナーなどの大技も決めてみせた。だが、清宮の武藤対策に上回られた。再三にわたりおきて破り殺法に悪戦苦闘。最後は足4の字固めでとらえられると、ついにギブアップを喫した。

それでも、表情は穏やかだった。バックステージでは「プロレスをやって感じる体の痛み。いろんなことがプロレスラー冥利(みょうり)に尽きる。心地よくてしょうがない、うれしくてしょうがない」と、笑顔も見せた。

リングを降りるその日まで、全力を誓う。9月25日の愛知大会(ドルフィンズアリーナ)、10月30日の東京・有明アリーナ大会と戦いは続く。化身のムタも来年1月22日に神奈川・横浜アリーナに降臨する予定だ。「以上!」と一言、力強く言って会場を後にした。【勝部晃多】