全日本一筋48年の渕正信(68)が、「旧道場トリオ」で日本武道館を沸かせた。

休憩後の第8試合となった「スペシャル6人タッグマッチ」で、若手時代に苦楽をともにした大仁田厚(64)、越中詩郎(64)とタッグを結成。現役最高齢プロレスラーのグレート小鹿(80)、谷津嘉章(66)、井上雅央(52)組と対戦し、華麗なドロップキックを披露するなど躍動した。

最後は、セコンドに付いたザ・グレート・カブキの毒霧による援護射撃を受けると、自ら井上にバックドロップを決めて、11分を超える戦いを制した。そして会場の四方へ、深々とお辞儀。「日本武道館に帰ってきました!」と、18年7カ月ぶりとなる聖地への帰還を、仲間とともに喜んだ。

渕は旗揚げから2年後の74年に全日本に入門。若手時代は、大仁田らとともにジャンボ鶴田さんが給料で購入した東京・砧の道場で、住み込み稽古をしていた。「いつも3時間の練習をやっていたけど、それ以外にも技の研究などを思いつくと、みんなで一緒に練習をしていた」と、仲間同士で高めあった。

道場は住宅街にあったため、近所迷惑にならないように配慮したという。「練習の音などでいつも迷惑をかけていたので、よくあいさつに行ったりしていた」。リーダーの鶴田さんを先頭に、巡業から戻るたびに地方の名産品を持参。細やかな気配りは、神奈川・青葉区へ道場を移した現在も、地元密着を目指す団体の礎になっている。

大会前には「半世紀の歴史を築けたのは応援してくれているファンの皆さんのおかげ。レスラーだけの力じゃないので、全てに感謝したい」と話していた。その思いを、この日もプロレスで表現した渕。「明るく楽しく激しいプロレスを、これからもよろしくお願いします」。創設者ジャイアント馬場さんの意志をつないでいく。