ボクシングWBO世界バンタム級王者ポール・バトラー(34=英国)が「ロッキー魂」で番狂わせを起こす。

8日、13日に東京・有明アリーナで行われるWBAスーパー、WBC、IBF世界同級王者井上尚弥(29=大橋)との4団体王座統一戦に向け、横浜市内で練習を公開。戦前予想の不利を覆す姿勢をみせた。同陣営のマネジャー兼トレーナーのジョー・ギャラガー氏は映画「ロッキー」の主人公ロッキー・バルボアや登場人物を挙げ、井上撃破に自信をみせた。

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海外ブックメーカー(賭け屋)の井上有利の戦前予想にも、バトラーは自信に満ちた顔をみせた。英大手ウィリアムヒルで井上の勝利に1・02倍、バトラーは15倍という大差オッズになっていることを問われても、「ブックメーカーが設定していること。前試合も予想は相手が有利だったが、私が勝った」と涼しい表情だった。

井上には敬意を表している。19年5月に英グラスゴーで行われた井上-ロドリゲス戦の興行に自らも出場。同戦を生観戦しており「本当に素晴らしい。(最強選手ランク)パウンド・フォー・パウンド1~2位で世界王者」と同級最強と認めた。その上で、自身の最大の強みも強調。「私の武器はボクシング脳。4団体統一王者は一生の目標。井上より上回る点? 非常に難しい質問だが、試合がその結果をみせてくれる」と静かに燃えていた。

多くの世界王者を育成してきた名指導者ギャラガー氏の言葉は熱かった。バトラー不利の戦前予想に対し、まず英地元紙でコメント。映画「ロッキー」で、主人公が下馬評を覆して世界王者アポロを倒したことになぞらえ、「井上に勝ったらロッキーの物語になる」とした。この日はさらに、「ポールは世界王者。彼はアポロだと思うし、今度は(ロッキー4の敵)ドラゴのような選手になるかも。見ている人たちに衝撃を与えるような試合になる」と太鼓判を押した。井上には隙があるとし「守りに弱点があると思う。ミスは逃さないように突きたい」と手応えを口にした。【藤中栄二】

◆ポール・バトラー 1988年11月11日、英エルズミアポート生まれ。アマ時代には英国選手権フライ級優勝。10年12月、アルファドリ(英国)戦に4回判定勝ちでプロデビュー。14年6月、IBF世界バンタム級王座を獲得。14年10月に同王座返上。スーパーフライ級に転向し、15年に当時のIBF王者テテ(南アフリカ)に挑戦も8回KO負け。16年10月からバンタム級復帰。同年にIBF同級王座決定戦でロドリゲス(プエルトリコ)に敗退。22年4月、WBO同級暫定王座決定戦でスルタン(フィリピン)に判定勝ち。後に正規王者昇格。身長168センチの右ボクサー。

〇…井上陣営の大橋会長、父真吾トレーナーがバトラーの練習を視察した。上半身裸の姿、この日で55・8キロと減量も順調だと確認。練習で右構えからサウスポーに替えるシーンがあり、大橋会長は「すごく小刻みに動いて、タイミング良くパンチが強い。左が特に強い。強く打ってくるパンチは『ある』と思うので気をつけたい」と警戒。真吾氏は「基本に忠実でガードもしっかりしている。崩すのは難しいとは思う。バトラーが出てきてくれれば流れが変わる」とした。