元年俸120円Jリーガーで、20年末から格闘家へ転身した安彦考真(44)が8日、都内で行われたアマチュア格闘技イベント「EXECUTIVE FIGHT BUSHIDO~皇~」(東京・八芳園)の前日会見に出席し、意気込みを語った。

対戦するのは、10月に相手の母国スイス・チューリヒで開催された格闘技大会「ノックアウト・ファイトナイト8」で相まみえたパトリック・カバシ(28)。互いにダウンを奪い合って引き分けに終わった相手が急きょ来日し、リターンマッチを行う。安彦は「相手も不完全燃焼で、またやりたいということで。また対戦できることを楽しみにしています。アンディ・フグさんの母国スイスで、あの試合は僕の経験値になった。タフな選手ですが、今回でちゃんと決着をつけたい」と力を込めた。

カバシも「前回の試合はとても厳しいものだったが、今回のためにトレーニングを積んできました。いい戦いになると思う」と不敵に笑った。

試合は大会唯一のプロ戦として、67キロ契約の3分3Rで行う。安彦は「今はサッカーW杯もやっているし、試合前に国歌を流せたらいいなと思っています。スイスにはFIFAの本部もあるし、これが僕の中でのW杯。熱いファイトで、見る人の心が動かされるものをみせたい」と意気込んだ。

格闘家に転身し、まもなく丸2年が経つ。目標に掲げた大みそかの格闘技イベント「RIZIN」出場はまだかなっていないが、諦めてもいない。「この年末がどうかなという思いもあるけど、それでもやり続けることが大事」と語り「目指す舞台をつかむためにもしっかり勝って、次のステージにいきたい。W杯のスペイン戦のように、1ミリの可能性を全員が持っている。それを忘れないことが重要だと思います」と説いた。思わぬ形で実現したホーム&アウェーの決戦。ここまで格闘家としてはプロアマ含め、7戦6勝1分の無敗。異国の難敵もしっかりと撃破し、信じる道を進んでいく。【松尾幸之介】

◆安彦考真(あびこ・たかまさ)1978年(昭53)2月1日、神奈川県生まれ。高校3年時に単身ブラジルへ渡り、19歳で地元クラブとプロ契約を結んだが開幕直前のけがもあり、帰国。03年に引退するも17年夏に39歳で再びプロ入りを志し、18年3月に練習生を経てJ2水戸と40歳でプロ契約。出場機会を得られず19年にJ3YS横浜に移籍。同年開幕戦の鳥取戦に41歳1カ月9日で途中出場し、ジーコの持つJリーグ最年長初出場記録(40歳2カ月13日)を更新。20年限りで現役を引退し、格闘家転向を表明。同年12月には初の著書「おっさんJリーガーが年俸120円でも最高に幸福なわけ」(小学館)を出版。オンラインサロン「Team ABIKO」も開設。21年4月にアマチュア格闘技イベント「EXECUTIVE FIGHT 武士道」で格闘家デビュー。22年8月に同大会75キロ以下級の王者に輝いた。プロとしては22年2月16日にRISEでデビュー。同6月24日のRISE159にも出場し、プロ2連勝中。175センチ、74キロ。