“プロレスリングマスター”武藤敬司(60=プロレスリング・ノア)の引退試合開催に黄色信号がともった。21日に迫る東京ドーム大会を前に両足大腿(だいたい)部の肉離れを告白。4日までにノアの公式ユーチューブチャンネルで公開されたインタビュー動画で、消滅の危機を語った。

同大会で新日本プロレスの“制御不能なカリスマ”内藤哲也(40)との最後の一騎打ちを控える武藤だが、「今、非常にピンチ」と切り出した。「両足が痛くてしょうがない。現状のままだと試合もできない。歩くのもままならない」。先月22日に行われたノア横浜アリーナ大会で化身グレート・ムタが引退試合に臨んだが、試合中盤に大腿(だいたい)部を負傷していた。

今月1日にはK-1の年間表彰式「K-1 AWARDS 2022」でプレゼンターを務めたが、終始いすに座りながらの稼働。3日、東京・池上本門寺で予定されていた「節分追儺(ついな)式」には参加しなかった。引退試合まで残り3週間を切った。「プロレスの神様が最後の最後に俺に試練を与えた。今いちばんの敵は俺自身。本当に今、戦っていますよ」と、痛切な思いを打ち明けた。

50万円のVIP席、10万円のロイヤルシート、5万円のアリーナS席は既に全席完売。コンディションに反してファンの期待は募るばかりで、「今の俺の立場はプレッシャーがすごい。欠場していい?」と、ジョークの中にも本音がちらり。「今自分が自分に負けそうだもん。回復しないしストレスがたまって仕方がないよ」と、弱気な発言を重ねた。

それでも、天才の根源であるプライドは失われていなかった。「レスラーである以上最高のアートを作りたい。最後の最後はこれぞベストバウトだと思われる試合をしたい」と覚悟を決めた。かつて「リング上で燃え尽きて白い灰になりたい」と話した武藤。引退のその日まで全身全霊をささげる。