2団体統一王者の寺地拳四朗(31=BMB)が壮絶な“どつき合い”を制してベルトを死守した。

試合約2週間前に挑戦者に決まったWBA同級4位アンソニー・オラスクアガ(24=米国)と激しい打ち合い。3回に右カウンターでダウンを奪い、9回58秒、一気の連打でTKO勝ち。苦しかった激闘を象徴するように試合後は涙した。寺地の戦績は21勝(13KO)1敗となった。

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試合後の勝利インタビュー、寺地は天を仰いだ。その目にじわっと涙がにじむ。「心が折れそうになったけど、(加藤)トレーナーが『折れるな!』とかけてくれた言葉が響いた。1人で戦っているんじゃないんだなと。支えてくれたチームに感謝して泣いてしまった」と涙声で言った。

まさにけんか、どつき合いだった。「序盤にペースをつかんでどんどんいこうと思ったが、トニー(オラスクアガ)が全然落ちなくて。気持ちも強かったし、あそこまでついてくるとは思わなかった」。

3回に寺地が右カウンターでダウンを奪う。一気に仕留めにいったが、挑戦者は果敢に向かってきた。7回にボディー攻めで追い込むが、8回は逆に強烈な連打を食らって危なかった。9回も攻められて、攻め返しての連打でTKO勝ち。紙一重の攻防を制してベルトを守り抜き「ホッとした」とまた涙ぐんだ。

アクシデントで生まれた戦いだった。当初は3団体統一戦のはずが、WBO王者ゴンサレスがマイコプラズマ肺炎で来日不可能となった。タイトル防衛戦になり、相手はサウスポーからオーソドックスに変わった。寺地は「正直、不安があった」と振り返る。それを払拭(ふっしょく)したのも加藤トレーナーだった。「加藤さんと話すと落ち着く。支えてくれてありがとうしかない」と感謝した。

練習拠点を三迫ジムに構えてからのコンビは、試合を重ねるごとに絆を深める。寺地が矢吹正道に敗れてベルトを失った時。自宅に閉じこもり、闇にはまって「ボクシングを辞めよう」と真剣に考えた際も、時間をかけて戻してくれた。絶大な信頼がこの日生きた。

今後は現級で4団体統一の夢を追いかけるか、フライ級転向か「五分五分です」と言い、「加藤さんと相談します」。2人で追うべき夢を描いていく。【実藤健一】

◆寺地拳四朗(てらじ・けんしろう)1992年(平4)1月6日、京都府城陽市生まれ。「北斗の拳」の主人公ケンシロウから命名。奈良朱雀(すざく)高-関大。アマチュア戦績は58勝(20KO・RSC)16敗。14年8月にプロデビュー。17年5月にWBC世界ライトフライ級王座を獲得し8連続防衛。昨年11月、WBAスーパー王者だった京口紘人との王座統一戦を7回TKO勝利で制した。プロ戦績は21勝(13KO)1敗。身長164センチの右ボクサーファイター。