IBF世界ライトフライ級王者の矢吹正道(32=LUSH緑)が血まみれの2階級制覇を果たした。1階級上の同フライ級王者アンヘル・アヤラ(24=メキシコ)に挑戦。1、2回とダウンを奪うが3回に相手のバッティングで右目下をカットして大量出血。全身を血まみれにしながら打ち合い、最終12回に3度目のダウンを奪い、その後のラッシュで1分54秒TKO勝ちした。王座を保持したまま1階級上を制したのは日本選手初。5月に初の世界戦に挑む弟の力石政法(30=大橋)に力強くバトンを渡した。
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白かったものがすべて赤く染まった。まさにチャンピオン同士の激闘。アヤラと12回の死闘を終えた矢吹の白いトランクスとシューズは血で染められた。「返り血もあるけど自分の血がすごい。(試合を)止められないか不安だった」。
1回に左フック、2回には右のカウンターでダウンを奪い、完全に主導権を握った。しかし3回、相手の頭が右目下に入り、ざっくり切れて大量出血した。いつ試合を止められてもおかしくない状況だったが、激しい打ち合いは最終ラウンドまで続いた。7回に足がつる感覚があった。最後に矢吹が右フックで3度目のダウンを奪い、立ち上がったところに猛ラッシュでレフェリーが試合を止めた。すさまじい戦いだった。
序盤に2度ダウンを食らっても心が折れないアヤラは恐怖だった。矢吹は言う。「戦いながら自分のメンタルが弱いなと思ってしまった。バッティングぐらいで弱気になってしまって自分のボクシングができなかった」。アヤラはさすが、無敗の王者だった。「やっぱすごいパンチありましたね」。ポイントでリードしても1発食らえばやられる。そんなしびれる戦いを勝ちきった。試合後、右目下を8針縫った。
ライトフライ級の王座を保持したまま、2階級制覇の日本選手初の偉業を成し遂げた。「2階級制覇とか後からついてくるものなんで」と軽く受け流す。それよりも気がかりはこの日もセコンドについた弟・力石の世界初挑戦。「5月28日にめちゃ強いやつと戦うのでいいバトンを渡せたかなと思う」と胸を張った。
今後、1週間以内に1本のベルトを返上する。試合前から「ライトフライではやらない」と明言。勝ち取ったフライ級でベルト統一を含め、ビッグマッチを模索する。「しばらくはゆっくりしたいですね」。血まみれの激闘を制したおとこの本音が漏れた。【実藤健一】
○…兄・矢吹をセコンドとして支えたIBF世界スーパーフェザー級3位の力石が、大きな刺激を受けた。5月28日に横浜BUNTAIで同級1位エドアルド・ヌニェス(メキシコ)と王座決定戦に臨む。ヌニェスは27勝27KO1敗の強打者。力石は「兄は12回に倒しましたが、俺は1分で倒します」と宣言した。試合後は「1分はパフォーマンス。半分冗談です」と言いつつ「最初が勝負と思っている。いくところはいきたい」と目を輝かせる。待望の世界初挑戦。「さすがですね」という兄の勝利を目に焼き付け悲願のベルト奪取に挑む。
◆矢吹正道(やぶき・まさみち)本名・佐藤正道。「佐藤じゃつまらない」と不滅のボクシングマンガ“あしたのジョー”の主人公・矢吹丈からリングネームをもらった。1992年(平4)7月9日、三重県鈴鹿市生まれ。16年3月、2回TKO勝ちでプロデビュー。20年7月、日本ライトフライ級王座を獲得。21年9月にWBC世界ライトフライ級王座獲得も寺地と22年3月の再戦に敗れる。今年10月、IBF同級王座を獲得。戦績は18勝(17KO)4敗。身長166センチの右ボクサーファイター。家族は恭子夫人と1女1男。

