無敗の格闘家でボクシングWBC世界バンタム級1位の那須川天心(27=帝拳)が待望の世界初挑戦を控え、自ら編集長を務める「天心新聞」を日刊スポーツの読者にお届けします。24日にトヨタアリーナ東京で同級2位の井上拓真(29=大橋)との同級王座決定戦に臨みます。2度の世界王座戴冠という実力派の元王者と転向8戦目で王座を争う大事な一戦に向けた「天心流」心の整え方とは? 第5回のテーマは「はじめまして、世界」です。
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24日に井上拓真選手と世界戦することになったのはみんな知っていると思う。 ボクシング転向から3年ぐらい。初の世界戦だし「プレッシャーは?」なんて聞かれるけど、自分には「ない」(笑い)。あったとしても少なからず、というぐらいかな。想定外のことが起きてほしいと思って常に生きているので。起こらないはずのことが起きた方が面白くないかな?
何でプレッシャーって感じるのかな。いろんな理由があるんだろうけど、自分はやりたくてやっている。だって好きなことだし。嫌ならやらなきゃいいじゃんと。
負けるなんて一切、考えてないけど、負けたとて人生が変わるわけではない。やるべきことをすべてやって、もし負けたとしても怖くはない。そこまでしっかり用意してやってきている。だからどんな結果であれ、受け入れられるし。
仕事人間っているじゃないですか。自分も格闘技が好きでできることならずっとやりたいと思うし。ただ自分でやっているのと、やらされているのでは絶対に違う。自分がやりたいからやるっていう風になれば、何事も問題ないと思う。
僕はボクシングだけが仕事だと思っていない。自分を見せたり、表現したりするのが仕事だという自負がある。日常からエンターテインメントで祭りもやるし個展もやる。何でも体現することが自分なのかなと思う。
僕の人生は常に日記。思ったこと起きたことは全部コンテンツ。ライフ・イズ・コンテンツなんで。朝起きて寝るまでボクシングのことを考えてはいる。けれど人生をちゃんと生きているという方が大事だと思う。
2~3カ月前ぐらいかな、大阪合宿に行った時、チャリでジムを行き来していたら能の演芸場を見つけて。めっちゃ気になって何だろうと看板を見たら、すごい興味深かった。面白いと思って「風姿花伝」という本まで買って読んだ。
人前で何かをやる時に、どうやって表現するのか。「何でこんな動きができるのだろう」と思わせることは、ボクシングに通じるものがあると感じた。
チャリ移動していなかったら出会わないし、引っかかって出会ったんだと思ってる。10月には乗馬もしたし。動物に乗る経験はなかなかないもの。昔から人間と馬は親和性が高いと聞くし、戦国時代は武士が一緒に戦っていたと思うと感慨深かった。
乗る姿勢も大事で、骨盤をしっかりと立てないといけない。あの姿勢を長くできるのは昔の人の特徴かなと思いながら、ボクシングに通じると感じたし。
僕は他のことに目を向けることがボクシングにつながると思ってる。「もしかしたら」ではなく「絶対に」つながると。自分で納得していないと何事もうまくいかないわけで。確かに執着してボクシングだけやるという時期も大事なんだけど…そうなってしまうと新たな広がりを見つけることもできないと思う。なので、変なプライド捨てましょうと。
僕は執着したら成長が止まると思ってる。時代は変わっているのにモノや価値観が変わらないなんてありえない。ちゃんと伝統を守りながら変化をしていくもの。時とともに人の感情、価値観も変わっていくし。いろいろなことを考えたり見たりしていると、やっていることは違えど本質的なものって一緒と思う。やっていることは違っても通ずるものはたくさんあるんだと。
興味を持ったら、そういうところにたどり着く。例えば「引き寄せの法則」とか聞いたことあるんじゃないかな。
運が良い人悪い人ってあるけど、運は自分でつかむもの。視野が広ければ、僕は運が良いと思う。世の中に幸せやチャンスはいっぱいある。あるけど、みんなつかまない。幸せは来るものと思っているみたいだけど待っていても来ないし。自分で視野を広げて探さないとつかめないと思う。いろんな引き寄せの力があって世の中に奇跡を起こすことができると思ってる。
多分、試合1週間前ぐらいまで時間が許せばどこかに行くはず。僕は日程を決めないタイプなので、行きたいと思ったらいくし、いいかな~と思ったら行かないし。執着も固執していないから、ずっと全部にワクワクがある。「はじめまして、世界」。試合発表会見のあいさつで言ったような、そんなすがすがしい気持ちで24日を待ってる。(「天心新聞」編集長・那須川天心)

