プロボクシング4団体統一スーパーバンタム級王者井上尚弥(33=大橋)が5月2日、東京ドームでWBA、WBC、WBO世界同級1位中谷潤人(28=M・T)との防衛戦に臨む。3月6日の日刊スポーツ創刊80周年企画で井上は、日刊スポーツで評論家を務める所属ジムの大橋秀行会長(60)と師弟初対談に臨んでいた。週末に控える「世紀の一戦」とも言われるビッグマッチに向け、両者の対談の完全版を3回に渡って連載する。今回の中編では、地上波や現在の配信時代について2人が語り合った。【取材、構成=藤中栄二、首藤正徳、田口潤】

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◆地上波の影響力

井上 自分にとっては(18~19年開催の)WBSS(ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ)の地上波中継が1番、でかかったですね。街を歩いていても声をかけられる頻度が明らかに変わりましたし。

大橋会長 フジテレビが放送してくれたことは本当に大きかったよね。(18年5月にWBA世界バンタム級王者)マクドネルを1回で倒して、あれから(知名度が)ドーンと上がった。あの試合会場の大田区総合体育館は満員ではなかった。その次のWBSS1回戦が(1万5000人収容可能な)横浜アリーナだからちょっと大変かなと思ったけど「秒」でチケットが完売してしまった。

井上 自分も覚えていますよ。会長に「横浜アリーナ、埋まりますか?」って言いましたし。自分も(17年5月の)有明コロシアムの試合が全然、埋まってなくて。

大橋会長 最初は自信なかったよね。でも秒殺で売り切れた。そこから試合内容でも1回もしょっぱい試合がなかった。コロナ禍でみんな試合できない時にラスベガスで2試合できたこともすごく大きかった。

◆中継は配信時代。井上が21年12月、日本人世界王者として初めてペイ・パー・ビュー(PPV)を実施。

大橋会長 あの時が1番大変だったよね。「何で配信でやるんだ」とか批判的な声も受けた。今では当たり前になってしまったもんね。最初のPPVの演出も白一色で染めるイベントだったよね。お客さんに白の衣装で来て下さいとドレスコードをつくったり。あの時はすごかった。

井上 いろいろ話し合いながら、こういうのを試していこうと考えましたね。

こういうところから業界的なことが変わっていくのだろうなと思っていました。あれから配信に変わり、プライムビデオさんが参入し、Leminoも始まり、いろいろなところが参入してきましたよね。

大橋会長 配信は海外にも一気に拡散される。(24年6月にBWAA(全米ボクシング記者協会)の年間最優秀選手賞の授賞式で一緒に米ニューヨークに行った時は出待ちもすごかった。子供のファンも多かったし。(3階級で4団体統一のテレンス・)クロフォード(米国)が昨年来日した時も会いたいって言ってきて。ちょうど合宿中だったから断ったけれど。

井上 配信の時代になって、海外の方の反応が全然違いますよね。1番うれしいのは表彰式に来る方はボクシングを知っているから自分のことを分かっているはず。でも街でショップの店員さんとか関係ないところで声をかけられる。それが本当にビックリします。

配信の効果です。今は充実感あるけれど、自分が辞めてからも、それを継続していかなくてはいけないという責任感もあります。

大橋会長 これが続かないと意味がないからね。

井上 (引退後のため)意識してプロモーター目線で会長をみているのですけれど、あんまり見せてくれないんですよね。

大橋会長 俺は「こうで、こうで」と説明しているじゃん。手取り足取り(笑い)。見ていて分かると思うし、背中も見ているだろうし。自分がプロモート業をやるのとは全然違う。井上尚弥の世界的な知名度があるから、それはすごい武器だと思う。

井上 あとは英語ですね。自分がプロモーターになっても会長と一緒にやりますよ。(つづく)

井上尚弥「1回やってみて、また」大橋会長「だいぶ前から」5・2東京ドームを控え/師弟対談<上>