<力道山没50年追悼記念興行>◇16日◇東京・後楽園ホール◇1050人

 日本マット界初の3世レスラーが誕生した。プロレス界の祖・力道山の没後50年となる追悼記念興行で、孫の力(ちから、32)がデビュー戦を行った。「2世」の父百田光雄(65)との親子タッグでリングに上がると、祖父譲りの空手チョップを披露するなど会場を盛り上げた。力道山の時代を知る熱心なファンも多数詰め掛けた。

 力道山の没後50年の節目に、孫の力が思いを受け継いだ。祖父と同じ黒のロングタイツ姿でデビューのリングに上がり、相手の猛攻に耐えた。「技術はないが、自分の力は精いっぱい出せた」の言葉通り、憧れの舞台で持てる力を出した。祖父譲りの強烈なチョップ、雄たけびを上げながら連発した頭突き、エルボー。今できるシンプルな技のみで、プロレスの根底にある「戦い」を体現した。

 最後は対戦したNOSAWA論外に強烈なけさ切りチョップを見舞い、百田が岩石落とし。親子の共演で9分22秒、力道山にささげる勝利をつかみ取った。

 大会のテーマは「プロレスの力」。戦後の日本人に勇気を与えた力道山が非業の死を遂げて半世紀。試合前には「百田が選ぶ宿敵ベスト10」として、当時の試合映像が流された。会場を埋めた当時を知る世代、初めて見る若い世代がその姿に目をやった。第1試合で戦った力の後には、ウルティモ・ドラゴン、諏訪魔、秋山準、佐々木健介、高山善広らの豪華なメンバーが激闘で花を添え、小橋建太氏も会場に姿を見せた。

 百田がプロレスの原点と語る「やられたらやり返す単純な戦い」にファンの大声援が響き渡った。力は「技術は祖父の足元にも及ばないが、少しでも近づいていきたい」と涙を浮かべながら今後の努力を約束。50年の時を経て、力道山の存在の大きさが再認識されるとともに、新たな世代に「プロレスの力」が託された。【奥山将志】

 ◆力(ちから)本名・百田力。1981年(昭56)10月24日、東京・赤坂生まれ。土浦日大でレスリング部。日大法学部を経てスポーツトレーナーに。04年にノアの入団テストを受けるも不合格。178センチ、90キロ。