引退会見に臨んだ元関脇若の里(39=田子ノ浦)の一問一答

 -引退届を提出して、今どんな思いか

 若の里 名古屋場所の千秋楽が終わった時点で、自分の中ではケジメがついていました。ホッとしたという気持ちです。

 -青森での巡業を、わがままを言って行かせてもらうと言っていた

 若の里 本当はまだまだ現役を続けたまま、青森の巡業に行って、9月も相撲を取るという思いがあったんですが…。青森の巡業はだいぶ前から日程が決まっていて、以前から地元の巡業というのは楽しみにしていましたので、最後のわがままを言わせてもらって参加させていただきました。

 -そのときに(父を亡くす)ご不幸も重なった

 若の里 巡業が終わって、すぐ(弘前の実家に)駆け付けました。一連の葬儀をすべて終えて東京に戻りましたので、気持ちはもう落ち着きました。

 -23年余りの力士人生を振り返って

 若の里 好きでこの世界に入りましたので、とても楽しかったです。本音を言えば、まだまだやりたかったですが、もう体がついてきませんでしたので、引退することになりました。

 -鳴戸部屋には、どんな思いで入門したか

 若の里 厳しい世界だということは分かっていました。それでも力士になりたいという夢がありましたので、地元青森の先輩でもあります(先代の)鳴戸親方(元横綱隆の里)のところに入門させていただきました。仲間たちに恵まれて、同期生もたくさんいて…。切磋琢磨(せっさたくま)できて、関取になれたと思います。

 -ここまで長く、土俵の上に立つと、考えたことはあったか

 若の里 入門したときは、まったく考えていなかったです。1場所でもいいから十両に上がりたいと思っていた。

 -5年あまりで十両昇進。当時の喜びは

 若の里 23年半やりましたけど、その時が一番うれしかったですから、忘れることはできないです。

 -ケガとの闘いも関取の代名詞になった

 若の里 もうケガするところがないくらい、ケガをしました。正直、ケガさえなければなという気持ちもありますけど、逆に言えば、ケガがあったからここまでできたのかなとも思います。ケガに強い体を、もっともっと若いときからつくれば良かったなと思います。

 -鳴戸親方との出会いは、どんな影響を与えたか

 若の里 育ての親という感じです。実の父よりもいる時間が長かったですし、相撲界の父と思っていました。初めて会ったのは小学校6年生のときなんですが、あの出会いがあったからこそ今があると思います。一番に感謝したい人です。

 -厳しさに耐えられない時もあったのでは

 若の里 やっぱり稽古はつらいし、厳しかったですけど、自分がやりたくて入った世界でしたので、やめたいと思ったことはなかったです。

 -思い出の一番は

 若の里 聞かれると思って、いろいろ考えたんですけども…。2つ挙げさせてもらってよろしいでしょうか。1つは平成10年9月場所の、横綱貴乃花関との相撲です。中学3年生のときに、当時の貴花田関に弘前巡業で稽古をつけてもらいまして、それがあったので大相撲の世界に入ろうと最後の決意をしました。入門したときは僕は序ノ口で、貴乃花関は雲の上の存在でしたけども、いざ本当に対戦できた。対戦できるところまで行って、対戦したというのは忘れることができないです。負けると悔しいんですが、その日だけは、悔しさよりも対戦できたうれしさの方が勝っていたような感じがします。

 もう1つは、昨年の九州場所です。平成26年九州場所の輝との一番です。彼は付け人でずっとついておりましたので。本来、付け人は同じ部屋の後輩がほとんどやりますので、対戦はあまりない。2年間、付け人をしていた彼と対戦したときは、今までとは違った特別な感情がありました。この2番は忘れることができないです。

 -貴乃花関には、勝ちたかったか

 若の里 9回やって、9回負けました。でも、自分も一番力の出る時でした。それでも、勝てなかったわけですから、本当に強い横綱だったと思います。

 -大関という地位に近づいた時期もあった

 若の里 そうですね。でも、一生懸命やった結果がこれでしたので、自分の実力はそこまでだったのかなと思います。

 -どんな指導者になっていこうと思うか

 若の里 20年間、鳴戸親方に育てていただきましたので、やはり、鳴戸親方の教えというのが、基礎になっていくと思います。稽古場では厳しく、自分たちがやってきたこと、鳴戸親方から教えてもらったことを伝えて行ければと思います。

 -23年半、悔いはないか

 若の里 (即答で)まったくないです。

 -青森巡業が終わってからお父さまのもとへ駆け付けられて、どんな話をされたか

 若の里 本当はやっぱり、青森の巡業にも来てほしかったです。これから断髪式もありますので、そういったものにも来てほしかった。なんでもう、こんなに早く亡くなってしまったんだと。

 -若い力士たちに一番、伝えたいこととは

 若の里 ただ土俵の上で勝つだけじゃなく、稽古場も、私生活も、本場所はもちろんですけども、真面目に取り組む力士、そういう人が1人でも多く出てきてくれたらと思います。

 -23年半、こだわってきたことは何か

 若の里 毎日、本場所中は命がけで土俵に上がっていました。それだけは、貫いてきたと思います。

 -部屋の稀勢の里、高安の2人に期待するところ

 若の里 2人とも一生懸命やっていますので、いずれは、おいしいお酒が飲める日が来ると思います。先輩として、見守っていきたいと思います。

 -少し休みたい気持ちもあるのでは

 若の里 本当にケガが多くて、体がボロボロですので、少し体を休めたいなと思っています。