西前頭筆頭の宝富士(29=伊勢ケ浜)が、同郷の大先輩へ執念の白星を送った。7敗ともう後がない状況の中、関脇琴勇輝(25=佐渡ケ嶽)を押し出し、3勝目を挙げた。

 持ち前の粘り腰、我慢強さがようやく出た。宝富士は相手の激しい突っ張りにも下がらず、耐えて、耐えて、耐え抜いた。最後は、琴勇輝がスタミナ切れしたように土俵を割った。

 「テレビ解説に、出来山親方(元関脇出羽の花)がいたんで。気合入りました。同郷の先輩なんで」。ともに青森県北津軽郡中泊町出身。少年時代、地元で開催された子供相撲大会「出羽の花杯」に出場し、一緒に記念撮影したこともあった。その出来山親方が13日で65歳となり、今場所限りで定年を迎える。「会うたびに声を掛けてもらって。三役に上がった時には雪駄(せった)をいただいて。一門も部屋も違うのに、故郷の先輩からそうやってもらって、うれしかったんで。今日はいい相撲を取ろうと思ってたんです」。宝富士は、支度部屋で熱い思いを明かした。

 既に7敗を喫しているが、まだ勝ち越しへの望みが絶たれたわけではない。「モヤモヤして見えなかったものが、しっかり見えたんで。1番勝ったことで、気持ちも変わってくる。忘れていたものを思い出せて良かった」。同郷の先輩への思いから、強い気持ちと自信がよみがえってきた。