新入幕で幕内最軽量114キロの石浦(26=宮城野)が8連勝で勝ち越しを決めた。立ち合いで頭を下げて、同じ新入幕の北勝富士の懐に入り込むと、左を差して一気に寄り切った。平幕で唯一の勝ち越しを決め、新入幕の9日目での勝ち越しは14年秋場所の逸ノ城以来。

 石浦が持ち味を存分に生かした。低い立ち合いでぶつかると、183センチ、159キロの北勝富士の上体が浮いた。その瞬間を見逃さず、左を差し、相手の左足を渡し込んで一気の寄り切り。173センチ、関取最軽量の114キロの小兵らしい取組に会場は沸いた。「(兄弟子白鵬に)『給金を直すことができました』って報告したら、『おめでとう』って言われました」と、恥ずかしそうに笑った。

 アマチュアの強豪鳥取城北高では、3年時に世界ジュニア軽量級で優勝するなど華々しい成績を残した。日大に進学するも腸の病気を患ってプロ入りを断念した。卒業後に約3カ月のオーストラリアに語学留学した際、相撲への情熱が再燃。大学4年の時に声をかけてもらった宮城野部屋に入門し、約4年。平幕第1号の勝ち越しを決めた。

 快進撃に直結するルーティンがある。起床の午前8時30分から就寝の午前0時まで毎日、同じ行動を取っている。午後5時から1時間は「唯一相撲を忘れられる時間」として格闘ゲームに没頭する。午後10時からは風呂場で「20~30分、翌日の取組を考えます」。時間通りに行動することで落ち着ける。「僕みたいな小さい人は立ち合いが全て」。余計なことを考えず立ち合いの瞬間に、100%でぶつかることができる。

 初日は土俵入りで緊張して「ああしなきゃ、こうしなきゃと考えてました」と慌てたが、今では「逆に気合が入りますね」と頼もしい。唯一の験担ぎは、負けるまでひげをそらないこと。「怒られたらそりますけど…。そる機会が少ないようにしたいですね」と、初日の黒星以来そっていない、ひげと白星をどこまで伸ばせるか、注目だ。【佐々木隆史】

<石浦アラカルト>

 ◆生まれ 1990年(平2)1月10日、鳥取市生まれ。本名同じ。5歳から相撲を始める。父外喜義(ときよし)さんは鳥取城北高校長で相撲部総監督。ほか母と妹2人。血液型A。

 ◆好き 「ちびっ子ギャング」の異名を取った元関脇鷲羽山が理想で、場所入り前には映像を見た。プロ野球は阪神ファン。趣味はキャッチボールで、日大時代に貯金をはたいて黒地に赤と緑の線が入ったグラブを特注したほど。

 ◆利き腕 生まれつき左利き。父に食事や筆記で右利きに矯正されかけたが「ふてくされてご飯を食べなかった」と反抗。打撃だけ右打ち。

 ◆身体能力 スクワット260キロ、ベンチプレスも200キロを上げる。高校時代の50メートル走は6秒3。立ち幅跳びの3メートルは校内1位。