大相撲の貴乃花親方(45=元横綱)が、前例のない理事解任の処分を受けることが正式決定した。日本相撲協会は4日、東京・両国国技館で臨時評議員会を開き、巡業部長でありながら元横綱日馬富士関の暴行事件の報告を怠ったとして、解任決議を全会一致で承認した。

 暴行事件は貴乃花親方の理事解任で調査、処分という相撲協会が行うべき方策は一通り終わった。事件が起きた10月25日から実に71日も経過。最終的に暴行した元日馬富士関の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)と、被害を受けた貴ノ岩の貴乃花親方という両師匠が、同じ理事からの2階級降格となった。これには違和感を覚える声も聞かれるが、理事は一般企業なら取締役にあたる。今回問われた「忠実義務」は、取締役は会社に対して忠実に職務を行うべきと法律で定められており、それに違反するとみなされた責任は極めて重い。

 一方で71日もかかった背景には初動の遅れも否めない。相撲協会は11月初旬には事件を把握しながら対応せず、その後「引退勧告相当」との処分を下すことになる元日馬富士関を、九州場所の土俵に上げていた。これほどの大騒動となる事案と気付かなかったとみられても仕方ない。一般社会に置き換えた処分まで見据えられなかったといえる。

 さらに伊勢ケ浜親方、貴乃花親方ともに現状、約1カ月後の役員候補選挙に出馬する可能性が高いとされる。この姿勢も一般社会とはかけ離れた感覚と言わざるを得ないかもしれない。