不祥事が相次いだ大相撲で、新体制後初の本場所となる夏場所(東京・両国国技館)が13日に初日を迎える。3月26日の日本相撲協会理事会で、全会一致で3選が決まった八角理事長(54=元横綱北勝海)がインタビューに応じた。これまで語ることの少なかった思いを口にした。【取材・構成=高田文太】

 ◆不祥事と問われる伝統

 3月、理事長に再任した際に「暴力問題の根絶に取り組むことが第1課題」と宣言。この半年だけで元日馬富士関や貴公俊、峰崎部屋で暴力が発覚。他のスポーツよりも暴力が多いのは、厳しい伝統の名残なのか、競技性によるのか聞くと、八角理事長は「両方だと思います」と答えた。

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 八角 顔を突っ張ることが土俵ではよしとされる世界。それが土俵外で手が出ることにつながるかもしれないが、絶対にダメ。(立場の)強い者が弱い者をやるのは、いじめにもつながる。何回も何回も粘り強く研修会を開いて、意識を変えていかないといけない。

 他人同士が集団生活する相撲部屋の伝統を守りつつも、暴力を伴う上下関係の構築は絶対に許さない決意だ。一方で4月の春巡業を通じて「土俵の女人禁制」という伝統も議論された。

 きっかけは京都府舞鶴市の巡業で、市長が土俵であいさつ中に倒れた際の場内放送だった。女性看護師らが土俵に上がると行司が「女性の方は下りてください」とアナウンス。人命よりも伝統を優先したとされ、批判が殺到した。さらに兵庫県宝塚市の巡業では、女性市長が土俵であいさつできず、女性差別を訴えた。

 これらを受けて4月28日に「土俵と女性について」を議案に、臨時理事会を開いた。八角理事長は「女性を土俵に上げないことを伝統としてきましたが、緊急時、非常時は例外です。人の命にかかわる状況は例外中の例外です」と談話を発表、舞鶴市での対応を謝罪した。「土俵の女人禁制」については「私どもに時間を与えていただきたくお願い申し上げます」と審議を継続。各種伝統を見直す時期に突入したと自覚する。