関取復帰が見えてきた。関脇経験者で西幕下筆頭の豊ノ島(35=時津風)が、今場所の2番相撲に登場。やはり幕内上位経験者の東幕下3枚目の豊響(33=境川)をはたき込みで破り2戦全勝。関取復帰が有力となる勝ち越しまで、あと2勝とした。

“平成の猛牛”の異名を取る突貫相撲の相手だけに、迷いはなかった。立ち合いでしっかり踏み込むことだけに集中。胸から当たったその立ち合いで押し込まれはしたが、残り腰に余裕はあった。後退しながらも重心の低い相手をよく見て、左からいなしながら体を開き豊響の重い体を泳がせた。左足一本で軽快にクルリと半回転しながら、そのままはたきこんだ。

「先場所から戻ってきた」という立ち合いが勝因だった。「しっかり立ち合いで踏み込んでいたからね。あとは流れで、たまたまタイミングよく決まった。押し込まれると、切羽詰まってまともに引いてしまう。そうなると向こうの相撲。踏み込みが良かったからこその相撲だった」。立ち合いの圧力があっての、その後の流れ。一方的に当たり負けしていれば一発で持って行かれる危険を、押し込まれはしたが圧力をかけたことで回避。その後の流れは百戦錬磨の体が覚えていた。

豊響とは、8勝4敗だった幕内時代を含め通算でここまで10勝4敗。今年夏場所では全勝同士の4番相撲で当たり、上手出し投げで勝っていた。心臓の病で幕下に陥落し、再起をかけている姿は、ケガで陥落した自分のそれとダブる。もちろん土俵に上がれば感傷が入る余地はないが、土俵を離れれば別。「ふだんは仲も良いし、2人で再十両に同時昇進しようと話していたからね」と豊ノ島。この日の一番は「相手は変化する相撲じゃないから、自分らしい相撲を取れる相手。2番相撲で豊響と当たれたのは気持ち的に良かったんじゃないかな」と話し、さらに「向こうも(これから)星を伸ばして、一緒に昇進できるように、自分も引き締めたい」と1つ1つの白星の積み重ねを言い聞かせていた。