13場所ぶりの関取復帰を果たした東十両13枚目の豊ノ島(35=時津風)が、白星スタートを切った。

西十両12枚目の常幸龍(30=木瀬)と対戦。左からかち上げるように踏み込みも十分に立ち合いで当たると、低い重心から押し込んだ。徐々に後退する常幸龍を、さらに左からのおっつけで相手の重心を完全に崩し、最後は右肩からショルダータックルにように体を預け押し倒した。

最後に関取として土俵に上がったのが、16年夏場所千秋楽。関取としてその時以来の土俵で、勝ち名乗りも同じ903日ぶりに受けた。取組そのものは「思ったより緊張感はなくて、思い切って取れた」と言うものの、母校の高知・宿毛高から以前に贈られた化粧まわしを締めて臨んだ土俵入りは「めちゃめちゃ、こみ上げるものがあって涙が出そうだった」と言う。それを抑えるのに「何か別のことを考えて涙が出ないようにした」と必死だったようだ。

2年半のブランクのせいか、出番前の髪結い、土俵下で水をつける所作に戸惑いもあった。同時に場所入りして「土俵入りがある。締め込みもあり、さがりも硬いのは久しぶり。明け荷もあるし付け人もいる。そうやっていくうちに関取になったんだなと実感した」と、あらてめて思い出したようだ。

会場には、東京から沙帆夫人と、長女の希歩ちゃんが駆けつけ声をからして応援していた。それには「家族の前で勝てて良かった」と、しみじみとつぶやいた。幕内上位で横綱と対戦するという真の復活劇は、始まったばかり。「今の状況だと引退がゴール。簡単にゴールしないように頑張りたい。今日の1勝はもちろん大きいし、前に出る若々しい相撲を取れたけど、今場所好成績を残す上での1勝にしたい。この1勝で気持ちを高ぶらせることなく、明日からまた冷静な気持ちで行きたいですね」。待ち望んだ楽しみな場所は、まだ14日も続く。