先場所2度目の優勝を果たした関脇御嶽海(26=出羽海)が、西前頭2枚目明生(24=立浪)を寄り切って2勝目を挙げた。顔面流血しながら連敗を阻止し、大関昇進の目安となる「三役で3場所33勝」まで残り10勝とした。10月12日の台風19号から1カ月、甚大な被害を受けた地元長野へ勇姿を見せた。横綱白鵬が小結朝乃山を退け、三役以上の全勝が早くも消えた。無敗は豊山ら平幕3人だけとなった。

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勝ち名乗りを受けた御嶽海は、土俵上で右目にタオルを押さえつけた。右まぶたは、ぱっくり割れていた。意識と視界ははっきりしているが、支度部屋に戻っても血はなかなか止まらない。止血後は消毒液を含んだ綿を手に持ち、鏡の前でゆっくり傷口を消毒した。「(負傷の影響は)明日取ってみないと分からない。縫うと痛いからなぁ…」。帰りの車に乗り込む直前まで、部屋宿舎に戻るか、病院で治療してもらうか悩んだ。

まぶた「カット」の影響を全く感じさせない相撲だった。明生に頭からぶちかましを食らったが、構わずもろ差し。左を抜いて最後は右差しで寄り切った。流血について問われると「立ち合い? たぶんそう」。7日のワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)バンタム級決勝での井上尚弥ら、ボクサーではよくある負傷箇所だが、相撲では異例。ハプニングをものともしなかった。

記録的豪雨をもたらした台風19号が地元長野など日本各地を襲ってから、ちょうど1カ月。今場所前には秋場所で獲得した殊勲賞の賞金200万円を寄付。番付発表会見では「地元があんなに被害を受けるとは思ってもみなかった。知り合いの方も多いので悲しい思い」と心を痛めた。本場所中で故郷に戻れないからこそ「自分の元気な相撲を取っていきたい」と誓う。

大関昇進の目安は12勝で、残り12日間で10勝を積み重ねないといけない。それでも連敗を阻止したことで、昇進ムードの低下だけは避けた。年間最多勝争いでも47勝目でトップに浮上。通算400出場を白星で飾った主役候補は「2桁だけ意識する。前に出るだけだから」と、ひょうひょうとしていた。【佐藤礼征】