新関脇の朝乃山(25=高砂)が、1つ上の番付に挑戦する。平幕の竜電を浴びせ倒しで破って10勝目を挙げ、春場所(3月8日初日、大阪・エディオンアリーナ)での大関とりの挑戦権を得た。小結だった昨年九州場所は11勝で、これで合計21勝。「三役で3場所33勝」が大関昇進の目安となっている中、近大出身の朝乃山にとって第2の故郷とも言える大阪で気を吐く。

   ◇   ◇   ◇

圧倒的な力強さを、朝乃山が見せつけた。すでに10勝を挙げている好調な竜電に、立ち合いでつっかけられた。それでも動揺は全くない。2度目の立ち合い。強烈な右のかち上げでぶつかり、瞬時に右を差してまわしを取った。得意の右四つになると、一気に前に出て豪快に浴びせ倒した。

「勝っても負けても次につながる相撲を取りたかった」。その言葉どおり、10勝目を挙げたことで春場所での大関とりが現実的となった。審判部の境川審判部長代理(元小結両国)は「右差しにこだわるのは立派」と評価。春場所が大関とりになることについては明言こそしなかったが「権利、チャンスはあると思う。両横綱が出て堂々といい成績なら。そういう(大関とりの)声が出るように頑張って欲しい。力は十分にある」と期待をかけた。

支度部屋で髪を結ってもらう時、ちょうど結びの一番がテレビ画面に映った。近大の先輩の徳勝龍が優勝したのを見届けると「うれしいけど、悔しいです」と本音をポロリ。場所中の18日深夜に同大相撲部の伊東監督が急逝。優勝争いに絡むことはできなかったが「2桁勝って恩返しができたと思います」と柔和な表情を見せた。

大関昇進の目安となる「三役で3場所33勝」のためには、春場所で12勝以上が必要。加えて横綱、大関を撃破するなど、内容も問われる。大関とりの場所については「今は考えません」と一言。つかの間の休みで充電し、第2の故郷の大阪で大暴れする。【佐々木隆史】