大関とりの関脇朝乃山(26=高砂)が、平幕の隆の勝を押し倒しで下して10勝目を挙げた。

大関昇進の目安となる「三役で3場所33勝」まであと2勝に迫り、13日目は2敗で並んだ横綱白鵬と対戦する。

白鵬から初勝利となれば、大関昇進と自身2度目の優勝がぐっと近づく。1敗で単独トップに立った平幕の碧山を、2敗で並ぶ白鵬、鶴竜の両横綱とともに追いかける。

   ◇   ◇   ◇

圧力が違う。右を差した朝乃山がじりじりと前に出る。押し込んだ隆の勝に土俵際で左に逃げられたが焦らない。慌てずにしっかりと追いかけ、腕を伸ばすと相手が勢いよく転んだ。「運良くこけた。圧力が出てたからだと思う」。番付下位の初顔合わせ相手に、力の違いを見せた。

史上初の無観客場所でも自分の相撲を取りきっている。新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、今場所中は不要不急な外出を控えている。近大出身の朝乃山にとって“第2の故郷”での後援会関係者や知人との会食は、リフレッシュする1つの機会だったが我慢する。そこで「好きなアクション映画を毎日観ています」と就寝前に1日1本、映画を鑑賞しているという。中盤戦頃から観だしたといい「1度、頭から相撲のことを離してリフレッシュできている」と独自の調整法が功を奏している。

これで3場所連続で2桁勝利を挙げ、大関昇進の目安まであと2勝に迫った。16年春場所で角界入りしてから、ずっと夢見てきた地位が目前に。場所前は意識して口にすることもあったが、今は「1日一番と考えている。明日に向けて切り替えて相撲を取るだけ」と気持ちを引き締めた。

13日目は過去2戦2敗の白鵬と結びで対戦する。「がっぷりになったら大横綱の形になる。当たって前に前に攻めるしかない」と真っ正面からぶつかる。優勝争いにも直結する2敗同士の一番。「意識はない。挑戦者の気持ちで15日間戦うだけ」。どっしりと構えた先に、夢の地位と2度目の賜杯がある。【佐々木隆史】