朝乃山の人間性が出るような立派な口上だった。定年の年に37年前、自分が使者を迎えた同じ所で、というのも感無量だ。口上の文句のように誰からも愛され目標とされる大関に、そして横綱を目指してほしい。

3年前の初場所で、高砂部屋の関取輩出が140年あまりで途絶えた。直前の九州場所で幕下15枚目以内だった朝乃山は、自分が全勝していれば…と本当に悔しそうだった。精神的に変わった分岐点はあそこかな。技術的には去年夏場所の優勝もあるが、その前から巡業で同じ右四つの栃ノ心と稽古を積んだのが大きい。大関の強さを肌で感じ型をつかんだ。

しこ名の話がよく出る。朝潮でイメージされるのは押し相撲で太平洋の潮流。富山出身の朝乃山は日本海の潮流で四つ相撲を印象づければいい。確固たる相撲になれば朝乃山のしこ名は定着する。ただ、真っ向勝負という部屋の伝統は忘れずに受け継いでほしい。

新型コロナウイルスの影響で、お祝いムードは薄いかもしれない。だからこそ活躍すればスポーツ界だけでなく、日本に明るい光を差せる。背負う看板は重いが、これも何かの運命。そうプラスにとらえて前向きに精進してほしい。(高砂浦五郎=元大関朝潮・日刊スポーツ評論家)