御嶽海にとっては、もったいない一番だった。力をつけてきたとはいえ、霧馬山には本来の当たりで突き起こせば問題なかった。立ち合いから、その突き放して前に出て、流れの中で四つに組むのならいい。それが御嶽海の良さ。だがこの日は押し込めない状態のまま、逆に霧馬山につかまえられてしまった。調子を下ろした(相手を見下した)という見方もあるが、どんな相手でも自分の相撲を取り切ることが大事だ。15日間の全てで理想の相撲を取るのは難しいが「自分の相撲を取る」という気持ちだけは忘れてはならない。

10日目は全勝の朝乃山戦だ。しばしば御嶽海には、もろい相撲を取った翌日、人が変わったような会心の相撲を取ることがある。朝乃山とすれば御嶽海の当たり、突き放しをしっかり止められるか。つかまえれば自分の流れになるし、下がると苦しい。優勝争いの最初のやまになりそうだ。

(高砂浦五郎=元大関朝潮・日刊スポーツ評論家)