大相撲の東京・墨田区にある旧井筒部屋の解体工事が4日から始まることが3日、分かった。工事前日のこの日、故先代井筒親方(元関脇逆鉾)の福薗杏里夫人が電話取材に応じた。杏里夫人は「主人が部屋を持ったのが26年前。お付き合いしてた時から部屋には行っていたので、あの部屋にはもっと長い時間関わってきた。あそこに全てが詰まっています。胸いっぱいです」と心境を明かした。

昨年9月に先代井筒親方が急逝。横綱鶴竜らは陸奥部屋へ転属となり、以降は杏里夫人が1人で生活してきた。しかし、73年に先々代井筒親方(元関脇鶴ケ峰)が現住所に創設した部屋は老朽化が激しく、また3階建ての部屋に1人で住むには広すぎた。「本当は死ぬまで住みたかったけど、現実的に無理な部分がありますから」と悔やんだ。「主人は引退したらビルにしたいと夢を持っていた」と、跡地にはマンションが建設される予定だ。

電話取材に応じた鶴竜は最近、1人で旧稽古場に行ったという。「寂しい限り。(土俵に)座っていれば涙も出てくる」としみじみ。腰痛などで2場所連続休場中で、11月場所(8日初日、東京・両国国技館)の出場も不透明だが「自分が生きている以上、その記憶がなくなることはない」と先代井筒親方の教えを胸に再起を目指す。現存する相撲部屋では出羽海部屋に次いで2番目に古く、歴史のある旧井筒部屋。建物がなくなっても、代々受け継がれてきた部屋の魂は消えない。【佐々木隆史】