幕内復帰を目指す人気力士の東十両4枚目炎鵬(26=宮城野)が、大技「つり落とし」を決めて勝ち越しに王手をかけた。

168センチ、98キロの炎鵬が、自身より66キロ重い182センチ、164キロの西十両筆頭天空海を持ち上げた。立ち合い左に変わりながら上手を取りにきた相手に対し、炎鵬は懐に潜り込んで右前まわし、左は深めの下手。相手を振りながら、肩に乗せるように相手をつった。「何も見えなかった。相手のおなかしか見えなかった」。豪快につり落としを決めると、館内は大きな拍手に包まれた。

つり落としは幕内では17年初場所初日に嘉風が千代翔馬相手に決めているが、十両では97年春場所3日目に舞の海が智乃花に決めて以来、24年ぶりとなった。

20年を超える自身の相撲歴の中でも、つり落としを決めるのは初めてという。「稽古でも1回もない。何が起こったのか分からなかった。とりあえず気持ち良かった。持ち上げたつもりはない。天空海関が飛んだというか、そこに自分が合わせた? なんて言うんですかね、自分でもよく分からない。飛んだのが分かったので、そこに乗っけるような感じ」。初めての感触だった。

前日8日目は東十両7枚目宇良との“人気小兵対決”に敗れたものの、ファンの期待に応える熱戦を繰り広げた。「昨日帰ってからも悔しさがひしひしと込み上げてきた」。一方で取組中に宇良が左ふくらはぎを負傷し、9日目から休場。炎鵬は「場所に来てから知って、気持ち的にもびっくりした。大きなけがじゃないことを願っています」と無事を祈る。宇良の分も土俵を盛り上げたい気持ちがあるかと問われると「いやいや、自分のできることを土俵でできたら」と謙虚に語った。