大相撲の元力士で、日本相撲協会公認の漫画家でもある琴剣淳弥(ことつるぎ・じゅんや、本名・宮田登=みやた・のぼる)さんが26日、千葉県習志野市の病院で死去した。60歳だった。葬儀・告別式は30日午前9時から千葉県船橋市北本町1の3の11、セレモ船橋駅北口ホールで。喪主は妻鈴代(すずよ)さん。

◇  ◇  ◇

琴剣さんの所属していた佐渡ケ嶽部屋では、朝稽古取材のあと、必ず「ちゃんこを食べていきなさい」と当時の佐渡ケ嶽親方(元横綱琴櫻)やマネジャーから声をかけられた。「食べないと、今後は取材させないよ」と半ば強制的にちゃんこ場に座らせられた。

おいしかった。そのちゃんこをつくっていたのが、当時ちゃんこ長だった琴剣さんだった。気さくで人懐っこくて、すぐに仲良くなった。「ボク、漫画が好きなんです」と部屋の風景や力士の日常生活などを描いたものを見せられた。プロ顔負けの腕だった。

「もったいないですね。うちにも描いてくれませんか」とお願いして、日刊スポーツの紙面に使わせてもらった。86年秋場所で引退すると、高田馬場にあった、佐渡ケ嶽部屋の先輩が経営するちゃんこ店で修業を始めた。琴剣さんの紹介でよく通い、いつも名物の豚の角煮をサービスしてもらった。「桝田さん、ありがとうございます」。店に行くたびに満面の笑みで頭を下げた人懐っこい姿が忘れられない。

引退後に結婚した鈴代夫人とその後ちゃんこ店を開き、夫人の勧めでまた漫画を描き始めた。その後の活躍は、テレビや雑誌、新聞などで拝見させていただいた。相撲の最高位は三段目46枚目と関取にはなれなかったが、大好きな漫画で人生の花を咲かせた。「結婚したんです」と送ってくれた記念の大皿が、今でもわが家にある。お祝い事のあるときに使わせてもらっています。剣さん、安らかに-。【桝田朗】