関脇照ノ富士(29=伊勢ケ浜)が昨年7月場所以来の優勝を果たして、確実にしている大関復帰に花を添えた。大関貴景勝を破って12勝目。3度目の幕内優勝は関脇以下では初となる快挙を成し遂げた。

史上最大のカムバックとなった。23歳で初優勝を果たし、場所後に大関昇進。しかしその後はけがと病気との戦いが続いた。両膝の負傷に加えて、C型肝炎、糖尿病なども患い、移動の際は人の手が必須。トイレに行くのさえ容易ではなかった。幕下陥落が決定した18年6月に両膝を手術。右膝には前十字靱帯(じんたい)が、左膝には半月板がなくなった。

17年の大関陥落後、師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)には何度も引退を申し出たが、認められなかった。「必ず幕内に戻れる」と粘り強い説得を受け、照ノ富士も「もう1度新弟子になろう」と決意。大好きな酒を断ち、黒まわしで再出発した。

19年春場所に序二段で復帰すると破竹の勢いで番付を上げ、昨年初場所で関取に復帰。再入幕となった昨年7月場所では幕尻優勝を果たした。返り三役の昨年11月場所で13勝、初場所で11勝を挙げて“再”大関とりとなった今場所。大関昇進目安は「三役で3場所33勝」だったが、目安を大きく上回る白星を積み重ねて大関復帰を確実にした。

平幕以下に落ちて大関復帰なら77年初場所の魁傑以来となる。現行のかど番制度となった1969年名古屋場所以降で大関陥落の翌場所に10勝以上を挙げて復帰したのは6人7例、加えて陥落から7場所を要して返り咲いた魁傑もいるが、大関復帰を決めた場所での優勝は初めて。記録ずくめの賜杯となった。【佐藤礼征】