照ノ富士(29=伊勢ケ浜)が、昭和以降では初めてとなる大関復帰場所での優勝を果たした。優勝に王手をかけた千秋楽の結びで大関貴景勝に敗れ、12勝3敗と並ばれた。しかし。貴景勝との決定戦を制して、2場所連続4度目の優勝を決めた。

師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)によると、場所前の稽古では古傷である膝の状態が上向かず「稽古はちょっと足りてない」と明かしていたが、不安を感じさせない15日間だった。

初日に17年秋場所3日目以来、1335日ぶりの大関としての白星を挙げると、破竹の勢いで白星を積み重ねる。9日目には4連敗中の高安に辛勝。11日目の妙義龍戦で、相手のまげに手がかかって反則負け、14日目に遠藤と物言いがつく熱戦に敗れたが、最後は勝ち切った。

両膝の負傷や糖尿病などの内臓疾患に苦しみ、17年秋場所後に大関から陥落して一時は序二段まで番付を落とした。伊勢ケ浜親方には何度も「やめたい」と引退の意向を伝えたが、粘り強い説得を受けて再起の道を選んだ。19年春場所に序二段で復帰。昨年初場所で関取復帰を果たすと、幕内に返り咲いた同年7月場所で2度目の優勝を飾った。

3月の春場所後に大関復帰を決めた。2度目の伝達式では「謹んでお受けいたします」と口上はシンプル。初めて昇進した15年夏場所後の伝達式では「今後も心技体の充実に努め、さらに上を目指して精進いたします」と述べていた。「2回目ということだから、やはり気持ちはずっと変わっていない」と照ノ富士。6年前に口にした綱とりへの思いは変わらなかった。

大関として初めての優勝を果たし、7月の名古屋場所(4日初日、ドルフィンズアリーナ)で綱とりに挑戦する。春場所限りで鶴竜が引退したため、横綱は白鵬ただ1人。その白鵬は、来場所に進退を懸けて臨む意向を示している。注目必至の名古屋で、不屈の男は最高位を射止める。