照ノ富士が勇気づけられたという“隻腕の力士”も快挙を喜んだ。

東京・拓大第一高で教員を務める布施美樹さん(47)は「最後はヒヤヒヤしました」と、照ノ富士の相撲をテレビ越しで観戦したという。布施さんは小学校2年の時に自宅で農作業を手伝っていた際、誤って草を切るカッターで腕を切断。右肘から先をなくすハンディを抱えながら、高校総体ベスト8などアマチュア相撲で実績を残した。

場所前の取材で照ノ富士は、過去に放送された布施さんのドキュメンタリー番組を何度も見返していたことを明らかにしていた。「この体でも一生懸命相撲を取っているのを見ると、自分もという気持ちになる」。両膝のけがや糖尿病などの内臓疾患に苦しんだだけに、感じるものがあったようだ。

布施さんは現在、東京・拓大第一高の職員として同校相撲部や、三鷹市の相撲クラブで指導者としての道を歩んでいる。照ノ富士と直接の交流はないが、10年に沖縄で行われた高校総体で、照ノ富士が鳥取城北高の団体優勝に貢献した場面を現地で見たことがあるという。「四つ身のうまさもだけど、力強さとセンスに驚いた思い出がある」と振り返る。

照ノ富士が過去のドキュメンタリー番組を見て力をもらっていると発言したことについて、布施さんは「ありがたいことですね」と喜んだ。「(照ノ富士の復活劇を)今度の指導の例にしていきたい。逆境に立ち向かう姿勢を教えていきたい」。照ノ富士の不屈の精神はアマチュア相撲にも広がっていく。【佐藤礼征】