幕内最年長の37歳、東前頭3枚目の玉鷲(片男波)が、横綱照ノ富士の昨年秋場所13日目から続いた連勝を23で止めた。

右から強烈なおっつけで横綱の体勢を崩し、突き落としで破り5勝1敗とした。玉鷲は19年夏場所で横綱鶴竜に勝って以来、4個目の金星。関脇御嶽海、平幕では阿炎が無傷の6連勝を飾った。大関正代は早くも3敗目を喫した。

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無敵を誇っていた横綱の牙城を崩したのは、37歳大ベテランだった。「立ち合いがよかったというか、何回も当たっていつも土俵際で負けていた。ようやく勝ててよかった」と玉鷲。突き放しからの強烈な右からのおっつけ。たまらず体勢を崩した照ノ富士を逃さず、休まず攻めての突き落としで陥落させた。

「狙い通りとは違う。タイミングよく入った。今までも土俵際までいって、そこから全然、押し切れなかった。よかったなと思います」

自他ともに認める鉄人だ。04年初場所初土俵。初めて番付に載った翌春場所から、1度も休まず土俵を務めている。この日が通算1397回目の取組。19年夏場所で横綱鶴竜を下して以来、4個目の金星。長く、強くあり続ける秘訣(ひけつ)を「すこやかです。素直にやること。(周囲の意見を)素直に聞くことが大事」とベテランらしく言った。

所属する片男波部屋は玉鷲を筆頭に、力士はわずか5人しかいない。東幕下2枚目に番付を上げてきた玉正鳳はいるが、コロナ禍で出稽古もままならない中、蓄積してきた経験値で調整を重ねる。「(稽古は)普通です。自分の相撲をとって、自分らしくいきたい」と言い切る自然体。年齢の壁も「ありますよ。動きとか考え方とか、残れるところで転んだりする」と話していた。それらも含め、理解して大金星につなげた。

初場所は3年前、13勝2敗で初優勝を飾った場所だ。「昔のことなんで、もう忘れましたよ」と笑うが、幕内優勝を飾るだけのポテンシャルを秘めている。横綱照ノ富士1強にくさびを打った。自身も5勝1敗の好成績で、今後に楽しみをつなげた。「またここからなんで。一番一番、自分の相撲をとっていきたい」。平板だった水面を大ベテランが大きく波立たせた。【実藤健一】